5αリダクターゼとは?AGAとの関係と抑制方法を解説

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5αリダクターゼとは?AGAとの関係と抑制方法を解説

「5αリダクターゼ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

AGAについて調べていると必ず目にするこの酵素は、実は薄毛の原因に深く関わっています。

5αリダクターゼは体内に存在する酵素で、男性ホルモンのテストステロンDHT(ジヒドロテストステロン)に変換する働きを持っています。

このDHTこそがAGAを引き起こす直接的な原因物質なんです。

つまり、5αリダクターゼの働きを抑えることができれば、AGAの進行を食い止められる可能性があるということですね。

この記事では、5αリダクターゼの基本的な仕組みから、Ⅰ型・Ⅱ型の違い、そしてフィナステリドデュタステリドといった治療薬による抑制方法まで、医学的根拠に基づいて詳しく解説していきます。

この記事の要約
  • 5αリダクターゼはテストステロンをDHTに変換する酵素で、AGAの原因に直結
  • Ⅰ型とⅡ型の2種類があり、AGAにはⅡ型が深く関与している
  • フィナステリドやデュタステリドなどの治療薬で5αリダクターゼを抑制できる
  • 結論:5αリダクターゼを抑制する治療薬は日本皮膚科学会のガイドラインで推奨度Aとされており、AGAの進行抑制に効果的です。医師と相談の上で適切な治療を選択しましょう。
この記事の監修者
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原 征弘
株式会社ゼロメディカル 代表取締役

2005年設立の株式会社ゼロメディカルで、医療・介護・福祉領域における経営支援や医療情報メディア運営、WEBマーケティングを統括。医療機関や関連施設の課題解決を支えるとともに、Kenkotto/Diamell/デンタルマイクロスコープClinic などの自社メディアを通じて、正確で分かりやすい情報を届ける体制づくりに取り組んでいる。

本記事では、医療機関の経営支援と医療メディア運営で培った知見にもとづき、情報の客観性・表記の妥当性・最新性を確認しています(※個別の診断・治療方針の判断は医師が行います)。

目次

5αリダクターゼとは|AGAの原因となる酵素

5αリダクターゼは、私たちの体内に存在する酵素の一種です。この酵素がAGAの発症にどのように関わっているのか、まずは基本的な仕組みから見ていきましょう。

体内での役割とDHTへの変換

5αリダクターゼの主な役割は、男性ホルモンであるテストステロンをDHT(ジヒドロテストステロン)に変換することです。テストステロンは筋肉の発達や男性らしい体つきの形成に関わるホルモンですが、5αリダクターゼによってDHTに変換されると、その作用が大きく変わります。

DHTは毛乳頭細胞の受容体と結合し、毛髪の成長を阻害します。具体的には、DHTが受容体と結合すると、毛髪の成長期が短縮され、十分に成長する前に毛が抜け落ちてしまうのです。

この変換プロセスは体内で自然に起こるものですが、5αリダクターゼの活性度には個人差があり、活性度が高い方ほどDHTが多く生成され、AGAを発症しやすくなります。

5αリダクターゼが存在する部位

5αリダクターゼは全身のさまざまな組織に存在しています。特に多く分布しているのは、頭皮の毛包(毛を作り出す器官)、前立腺、皮脂腺などです。

前頭部から頭頂部に5αリダクターゼが多く存在します。これがまさにAGAで薄毛が進行しやすい部位と一致しているんですね。一方、後頭部や側頭部には5αリダクターゼが比較的少ないため、AGAが進行しても毛髪が残りやすい傾向があります。

このように、5αリダクターゼの分布パターンがAGAの典型的な薄毛パターン(M字型や頭頂部の薄毛)を形成する大きな要因となっています。

5αリダクターゼの種類|Ⅰ型とⅡ型の違い

5αリダクターゼには「Ⅰ型」と「Ⅱ型」という2つのタイプが存在します。AGAの治療を考える上で、この違いを理解することはとても重要です。

Ⅰ型5αリダクターゼの特徴

Ⅰ型は主に皮脂腺や全身の皮膚に広く分布しています。頭皮全体にも存在しますが、AGAへの直接的な関与度はⅡ型と比べると低いとされています。

Ⅰ型は皮脂の分泌に関係しており、過剰な皮脂分泌による頭皮環境の悪化を通じて、間接的に毛髪の成長に影響を与える可能性があります。ただし、Ⅰ型だけを阻害してもAGAの改善効果は限定的であることが、これまでの研究でわかっています。

Ⅱ型5αリダクターゼの特徴

Ⅱ型5αリダクターゼは、毛包の毛乳頭細胞や前立腺に多く存在しています。特に前頭部から頭頂部の毛包に集中して分布しており、AGAの発症に深く関わっているタイプです。

Ⅱ型がAGAによる薄毛を引き起こす主な原因です。そのため、AGA治療ではこのⅡ型を重点的に阻害することが効果的とされています。日本皮膚科学会のガイドライン(2017年版)でも、Ⅱ型を阻害するフィナステリドが推奨度Aとされている理由はここにあります。

出典:日本皮膚科学会:男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版

Ⅰ型とⅡ型の比較表

項目Ⅰ型5αリダクターゼⅡ型5αリダクターゼ
主な分布部位皮脂腺、全身の皮膚毛乳頭細胞、前立腺
頭皮での分布頭皮全体に広く分布前頭部〜頭頂部に集中
AGAへの関与度低い(間接的)高い(直接的)
阻害薬デュタステリドフィナステリド、デュタステリド

この表からわかるように、AGAの治療においてはⅡ型の阻害が特に重要です。フィナステリドはⅡ型のみを阻害し、デュタステリドはⅠ型とⅡ型の両方を阻害するという違いがあります。

5αリダクターゼとAGAの関係|薄毛が進行するメカニズム

5αリダクターゼがどのようにしてAGAを引き起こすのか、そのメカニズムを詳しく見ていきましょう。毛髪の成長サイクルや遺伝的な要因についても解説します。

DHTがヘアサイクルに与える影響

毛髪には「ヘアサイクル」と呼ばれる成長周期があります。通常、毛髪は成長期(2〜6年)→退行期(2〜3週間)→休止期(3〜4ヶ月)というサイクルを繰り返しています。

DHTが毛乳頭細胞の男性ホルモン受容体と結合すると、TGF-βやDKK1といった成長抑制因子が分泌されます。これにより、本来2〜6年続くはずの成長期が数ヶ月〜1年程度にまで短縮されてしまうのです。

成長期が短くなると、毛髪は太く成長する前に抜け落ちます。このサイクルが繰り返されることで、毛髪は徐々に細く短くなり(軟毛化)、最終的には産毛のような状態になってしまいます。これがAGAによる薄毛進行のメカニズムです。

活性度が高いとAGAになりやすい?

活性度が高い方ほどDHTの生成量が多くなります。そのため、同じ量のテストステロンを持っていても、5αリダクターゼの活性度によってDHTの生成量が異なってきます。

活性度が高くても必ずAGAになるわけではありません

AGAの発症には、DHTと結合する男性ホルモン受容体の感受性も大きく関係しています。受容体の感受性が低ければ、DHTが多くても毛髪への影響は限定的です。

つまり、AGAの発症リスクは「5αリダクターゼの活性度」と「男性ホルモン受容体の感受性」の両方が関係しているということです。

5αリダクターゼの遺伝的要因

5αリダクターゼの活性度や男性ホルモン受容体の感受性は、遺伝的な影響を受けることがわかっています。AGAが「遺伝する」といわれるのは、このような体質が親から子へ受け継がれるためです。

特に母方の家系からの影響を受けやすいとされています。男性ホルモン受容体の遺伝子はX染色体上にあるため、母方の祖父や叔父にAGAの方がいる場合、AGAになるリスクが高まる可能性があります。

早期治療で遺伝的素因があっても進行抑制が可能

ただし、遺伝的な要因があっても、必ずAGAを発症するとは限りません。また、早期に治療を開始すれば、遺伝的な素因があっても進行を抑制できる可能性は十分にあります。

5αリダクターゼを抑制する方法は3つ|治療薬と生活習慣

5αリダクターゼの働きを抑えることで、DHTの生成を減らし、AGAの進行を抑制することができます。ここでは、医学的に効果が認められている治療薬と、補助的な方法について解説します。

1. フィナステリド(プロペシア)

フィナステリドは、5αリダクターゼ阻害薬として最も広く使用されているAGA治療薬です。日本では2005年に承認され、プロペシアという商品名で処方されています。

作用の仕組み

フィナステリドはⅡ型5αリダクターゼを選択的に阻害します。これにより、テストステロンからDHTへの変換が抑えられ、頭皮の毛包におけるDHT濃度が低下します。

DHTの減少により、ヘアサイクルの成長期が正常に近づき、毛髪が太く長く成長できるようになります。服用を継続することで、AGAの進行抑制と発毛効果が期待できます。

効果と副作用

日本皮膚科学会で推奨度A、約90%に進行抑制効果とされています。臨床試験では、1年間の服用で約90%の方に進行抑制効果が認められています。

効果実感まで3〜6ヶ月、継続服用が必要です

主な副作用として性欲減退(1.1%)、勃起不全(0.7%)が報告されています。

これらの症状が現れた場合は、服用を中止することで多くの場合改善します。また、フィナステリドは女性への投与は禁忌となっており、妊娠中の女性は錠剤に触れることも避ける必要があります。

出典:PMDA:プロペシア錠添付文書

2. デュタステリド(ザガーロ)

デュタステリドは、フィナステリドよりも後に登場した5αリダクターゼ阻害薬です。日本では2015年にAGA治療薬として承認され、ザガーロという商品名で処方されています。

フィナステリドとの違い

デュタステリドはⅠ型とⅡ型の両方を阻害します。フィナステリドがⅡ型のみを阻害するのに対し、この作用機序の違いにより、デュタステリドはフィナステリドよりも強力にDHTの生成を抑制できるとされています。

JAMA Dermatology(2022年)に掲載されたネットワークメタ解析では、24週後の総毛数改善においてデュタステリド0.5mg/日がフィナステリド1mgよりも優れた効果を示したと報告されています。

出典:JAMA Dermatology:ネットワークメタ解析

副作用は性欲減退(約3.9%)、勃起不全(約4.3%)とやや高め

副作用については、デュタステリドでは性欲減退(約3.9%)、勃起不全(約4.3%)、射精障害(約1.0%)などが報告されており、フィナステリドと比較してやや発生率が高い傾向があります。

出典:PMDA:ザガーロカプセル0.5mg添付文書

どちらを選ぶべき?

フィナステリドとデュタステリドのどちらを選ぶかは、AGAの進行度や体質によって異なります。一般的には、まずフィナステリドから始めて、効果が不十分な場合にデュタステリドへ切り替えるケースが多いです。

デュタステリドは半減期が長く体内排出に時間がかかる

デュタステリドはより強力な効果が期待できる一方で、副作用の発生率がやや高く、体内からの排出に時間がかかる(半減期が長い)という特徴があります。どちらの薬を選択するかは、医師と相談の上で決めることが大切です。

3. 食べ物・サプリメントによる抑制

治療薬以外にも、5αリダクターゼの働きを抑える可能性があるとされる食品やサプリメントがあります。ただし、これらの効果は治療薬と比べると限定的であり、科学的根拠も十分ではありません。

イソフラボン(大豆製品)

大豆に含まれるイソフラボンは、女性ホルモンに似た構造を持ち、5αリダクターゼの活性を抑制する可能性が示唆されています。豆腐、納豆、味噌などの大豆製品から摂取できます。

亜鉛

亜鉛は5αリダクターゼの活性を抑制する働きがあるといわれています。牡蠣、牛肉、ナッツ類などに多く含まれており、毛髪の成長に必要なミネラルでもあります。

ノコギリヤシ

ノコギリヤシは、北米原産の植物から抽出されるエキスで、5αリダクターゼを阻害する成分を含むとされています。サプリメントとして販売されていますが、日本では医薬品としては認められていません。

食品・サプリの効果は?エビデンスを解説

食品・サプリの5αリダクターゼ抑制効果は科学的検証が不十分

実験室レベルでの研究結果と、実際に人体で効果があるかどうかは別の問題です。

日本皮膚科学会のガイドライン(2017年版)でも、これらの成分によるAGA治療は推奨されていません。あくまで食生活の一部として取り入れる程度にとどめ、AGAの治療には医学的に効果が認められた治療薬を使用することをおすすめします。

5αリダクターゼ阻害薬で気をつけたいこと

フィナステリドやデュタステリドなどの5αリダクターゼ阻害薬は、AGA治療に効果的な薬ですが、服用にあたって知っておくべき注意点があります。

主な副作用と発生率

副作用の発生率は全体的に低いものの、注意が必要です。

5αリダクターゼ阻害薬の主な副作用として、以下のような症状が報告されています。

  • 性欲減退:フィナステリド約1.1%、デュタステリド約3.9%
  • 勃起不全:フィナステリド約0.7%、デュタステリド約4.3%
  • 射精障害:デュタステリド約1.0%
  • 乳房障害(女性化乳房など):まれ
  • 抑うつ症状:まれ

気になる症状があれば、すぐに医師に相談してください

これらの副作用は発生率としては低いものの、服用中に気になる症状があれば、すぐに医師に相談してください。多くの場合、服用を中止することで症状は改善します。

初期脱毛(シェディング)について

5αリダクターゼ阻害薬の服用を始めてから1〜2ヶ月頃に、一時的に抜け毛が増えることがあります。これは「初期脱毛」や「シェディング」と呼ばれる現象です。

初期脱毛は薬が効いている証拠です

DHTによって弱っていた毛髪が抜け落ち、新しい健康な毛髪が生えてくる準備段階と考えられています。通常は2〜3ヶ月で落ち着きますので、心配しすぎずに服用を継続することが大切です。

長期間続く場合や異常な脱毛量は医師に相談を

服用をやめるとどうなる?

服用を中止すると効果がなくなり、AGAが再進行します。

5αリダクターゼ阻害薬は、服用を続けている間は効果が持続しますが、服用を中止すると効果がなくなります。中止後は再びDHTの生成が増加し、AGAの進行が再開することが一般的です。

中止後6ヶ月〜1年で服用開始前の状態に戻ることが多い

そのため、AGA治療は長期的な継続が基本となります。

治療の中止を検討する場合は、自己判断せずに必ず医師に相談してください。治療計画の見直しや、他の治療法への切り替えなど、さまざまな選択肢を一緒に考えてもらうことが大切です。

まとめ

5αリダクターゼは、テストステロンをDHTに変換する酵素であり、AGAの発症に深く関わっています。特にⅡ型5αリダクターゼが前頭部から頭頂部の毛包に多く存在し、DHTを生成することでヘアサイクルを乱し、薄毛を引き起こします。

フィナステリドやデュタステリドは日本皮膚科学会で推奨度Aとされており、5αリダクターゼを抑制する治療法として有効です。継続的な服用により多くの方でAGAの進行抑制と発毛効果が期待できます。

食品やサプリメントによる5αリダクターゼ抑制については、科学的なエビデンスが限定的であり、あくまで補助的な位置づけとなります。本格的にAGAを治療したい場合は、医学的に効果が認められた治療薬の使用が推奨されます。

副作用リスクはあるが発生率は低く、多くは服用中止で改善

5αリダクターゼ阻害薬には副作用のリスクもありますが、発生率は低く、多くの場合は服用を中止することで改善します。初期脱毛(シェディング)や服用中断時の影響なども理解した上で、医師と相談しながら治療を進めていくことが大切です。

効果には個人差があります。早めに専門医に相談を

本記事でご紹介した治療法の効果には個人差があります。AGAは進行性の脱毛症ですので、気になる方は早めに専門医に相談し、ご自身に合った治療法を見つけてください。

この記事の監修者
監修者 原 征弘の写真

原 征弘
株式会社ゼロメディカル 代表取締役

2005年設立の株式会社ゼロメディカルで、医療・介護・福祉領域における経営支援や医療情報メディア運営、WEBマーケティングを統括。医療機関や関連施設の課題解決を支えるとともに、Kenkotto/Diamell/デンタルマイクロスコープClinic などの自社メディアを通じて、正確で分かりやすい情報を届ける体制づくりに取り組んでいる。

本記事では、医療機関の経営支援と医療メディア運営で培った知見にもとづき、情報の客観性・表記の妥当性・最新性を確認しています(※個別の診断・治療方針の判断は医師が行います)。

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