日本矯正歯科学会の医療広告ガイドライン解説|資格更新にHP倫理審査が必須へ

2026年度から、日本矯正歯科学会のHP倫理審査が大きく変わりました。
最大の変化は、審査がデロイトトーマツへ外部委託され、資格申請時に「通過証明書」が必須となった点です。
ここで多くの先生方が直面するのが「学会独自の審査基準」という壁です。厚労省の医療広告ガイドラインをクリアしていても、「プチ矯正」や「インビザライン認定ドクター」などの表現が残っているだけで、審査には通りません。
そこで本記事では、スムーズな資格更新に向けて「何がNGで、どこから手をつけるべきか」を具体的に解説します。
Contents
そもそもHP倫理審査とは?2026年度から何が変わったのか
HP倫理審査とは、日本矯正歯科学会が会員のホームページ等を審査し、学会独自の医療広告ガイドラインに適合しているかを確認する仕組みです。
この制度は会員の広告適正化を目的として運用されてきました。
ただ、実態として、審査の精度にはかなりばらつきがありました。これはチェックするのが、学会関係者であり、十分な工数を割くのが難しかったためだと思われます。
だからこそ多くの矯正歯科医の先生方は、以下のような感覚で乗り切ってきたのではないでしょうか。
- 「指摘が来たら直す」で問題ない
- ある程度の体裁を整えておけば通っていた
- 積極的に対応していなくてもトラブルになることは少ない
ところが2026年度から、その前提が崩れました。変更点は大きく2つあります。

審査の実施者がデロイトトーマツに変わった
1つ目は審査体制の変更です。HP倫理審査の実施者が、これまでの学会内部からデロイトトーマツに移行しました。
デロイトトーマツは、厚労省の医療広告ガイドラインにおける違反広告の調査も担当してきた機関であり、広告の規制運用に精通しています。
つまり、学会内部で幅のあった審査が、外部の専門機関によるチェックに切り替わったということです。
通過証明書がなければ資格申請ができなくなった
2つ目は、審査と資格申請の順序が変更になったことです。
これまでは資格申請後にHP倫理審査を受ける流れでしたが、今後は順番が逆転します。先に審査を通過し、「HPが問題ない」という通過証明書を取得しなければ、資格申請の書類そのものが受理されません。
対象は認定医の更新だけではありません。
- 認定医の更新
- 指導医の更新・新規申請
- 臨床指導医(仮称)の更新
- 臨床研修機関の新規申請
これらすべてです。
サイトが日本矯正歯科学会医療広告ガイドラインに適合していなければ、資格の更新申請が受け付けられません。いままでのように「申請してからサイトのことを考える」といった方法は通用しなくなりました。
変更前・変更後の比較と審査スケジュール

審査体制やルールだけでなく、スケジュール・料金・審査結果の扱いも従来とは異なります。
主な変更点
以下は、HP倫理審査の変更前と変更後を項目ごとに比較したものです。
- 審査の実施者:学会内部 → 外部委託(デロイトトーマツ)
- ※申請受付期間:概ね4月〜5月 → 2025年11月26日〜2026年4月30日
- 審査のタイミング:資格申請後に審査 → 資格申請前に通過が必要
- 審査料金:更新料に含まれていた → 別途22,000円(税込)
- 再審査料金:追加料金なし → 22,000円(3回目以降は無料)
※上記期間は2026年度更新の場合です。2027年以降のスケジュールは別途学会より発表される見込みです。
スケジュール
HP倫理審査の受付期間と、学会への資格申請期間は別の手続きです。
混同しやすいため、日程を並べて整理します。
- HP倫理審査の受付期間:2025年11月26日〜2026年4月30日
- 資格申請の開始:2026年4月1日〜
- 推奨される通過時期:2026年3月末頃まで
※上記スケジュールは2026年度更新の場合です。2027年以降のスケジュールは別途学会より発表される見込みです。
まずデロイトトーマツの審査を通過して証明書を受け取り、その証明書を添えて4月1日以降に学会へ資格申請をする。この二段階の流れになっています。
デロイトトーマツによる審査は今年度が初年度です。審査にどの程度の期間がかかるか、修正指摘がどこまで細かく入るかは、前例がないため読めません。4月に駆け込みが集中すれば、さらに時間がかかる可能性があります。
審査結果の3パターン
スケジュールとあわせて、審査結果のパターンも確認しておく必要があります。
結果は以下の3種類に分かれます。
- 通過:修正事項なし。通過証明書が発行される
- 条件付き通過:軽微な事項のみ。1ヶ月以内に自己修正。通過証明書は発行される
- 再審査:修正後、再度審査が必要(+22,000円)。通過後に証明書が発行される
条件付き通過でも証明書は発行されるので、資格申請には使えます。
ただし、1ヶ月以内に指摘箇所を修正しなければ証明書が取り消される可能性があります。 修正されたかどうかが後から確認される仕組みです。条件付きだからといって放置はできません。
審査対象はサイトだけではない

審査の対象範囲は、多くの矯正歯科医が想定しているよりも広いのが厄介な点です。自院のサイトを直せばそれで済む、というわけではありません。
エゴサーチでヒットするサイトはすべて対象
デロイトトーマツは「申請者氏名」「矯正歯科」等のキーワードでネット検索を行い、ヒットするサイトをすべて審査対象にするとされています。
- ホームページ:常勤・非常勤を問わない
- ブログ:医院公式も個人も含む
- SNS:Instagram、X、YouTube等
- 複数の医院:従事しているすべての医院が対象
非常勤先のサイトに学会の広告ガイドライン違反があれば、それだけで審査に影響する可能性があります。自分が把握していない他社制作・管理のサイトであっても関係ありません。
また、過去にWix等で自作したまま放置しているサイト、以前の勤務先ページに名前が残っているケースなど、検索でヒットすれば審査の目に入ります。一般歯科を含む医院の場合は、矯正歯科に関連する掲載内容が対象です。
通過証明書の有効期限と更新タイミング
審査対象の範囲とあわせて、証明書の有効期限にも注意が必要です。
通過証明書の有効期限は審査完了日から1年間です。
原則として再発行されません。そのため更新年に合わせたタイミングで審査を受ける必要があります。
同じクリニックに認定医が複数いる場合
複数の認定医が同じクリニックに在籍している場合も確認しておくべき点があります。
A先生が2026年更新、B先生が2027年更新なら、A先生の審査時に出た証明書はB先生の申請には使えません。なぜなら、先ほど述べたように通過証明書の期限は1年間だからです。A先生がHP倫理審査に合格しても、その証明書はB先生が学会の資格更新に使用する際は期限が切れているからです。
つまり先生ごと・更新年ごとにHP倫理審査が必要になります。
HP倫理審査で引っかかりやすいポイント

ここからは、審査で具体的に何が見られるのかを整理します。まず審査基準そのものと、掲載の前提となるルールから順に押さえていきます。
審査基準には学会独自の広告ガイドラインが含まれる
HP倫理審査の基準は以下の3つで構成されています。
- 厚労省の医療広告ガイドライン
- 医療広告ガイドラインに関するQ&A
- 日本矯正歯科学会の医療広告ガイドライン(学会独自基準)
1と2は医療機関全般に共通するルールです。問題は3番目の学会独自基準です。装置名の書き方、認定資格の掲載ルール、メーカーロゴの取り扱い、造語の禁止など、医療広告ガイドラインにはない独自の禁止事項がかなりの数に上ります。
医療広告ガイドラインの知識だけでは、この審査には対応できません。学会の広告ガイドラインに精通していない制作会社に依頼している場合、修正が不十分になるリスクがあります。
そこで審査の仕組みと対象範囲を踏まえた上で、何を修正すればよいのか。対応すべき項目を整理します。
限定解除の4条件:すべての掲載ルールの前提
認定資格、治療前後の写真、装置の商品名、薬機法未承認医薬品。これらをホームページに掲載するには、「限定解除」の4条件をすべて満たす必要があります。
- ウェブサイトであること
- 問い合わせ先の掲載
- 自費診療の内容と費用(治療費、治療期間、通院回数+自費診療である旨の明記)
- リスクと副作用の掲載
条件3には必須の文言が定められています。「矯正歯科治療は公的健康保険の対象外の自由(自費)診療となります。」という記載です。
この4条件が揃っていなければ、個別項目をどれだけ整えても前提が成立しません。
症例写真の掲載に必要な8項目
限定解除の条件を満たした上で、さらに症例写真には個別のルールがあります。ビフォーアフター写真を掲載する場合は、症例ごとに以下の8項目すべての記載が求められます。
- 主訴
- 診断名あるいは主な症状
- 年齢
- 治療に用いた主な装置
- 抜歯部位
- 治療期間
- 治療費概算
- リスクと副作用(当該症例に対して個別に)
8番目は、ページ下部にまとめて書いてある一般的なリスク説明では不十分です。その症例固有のリスクと副作用を症例ごとに個別で記載しなければなりません。リンクでの代替も認められていません。 症例を30件掲載しているサイトなら、30件すべてにこの8項目が求められます。
未承認装置の掲載に必要な5項目
症例写真のルールに加えて、使用する装置についても記載義務があります。インビザラインをはじめとする薬機法上の未承認装置を掲載する場合は、以下の5項目の記載が必要です。
- 未承認医薬品であること
- 入手経路等
- 国内の承認医薬品等の有無
- 諸外国における安全性等に係る情報
- 医薬品副作用被害救済制度の対象外であること
装置名の正式な書き方
掲載する装置の名称にもルールがあります。装置名は「一般名称(商品名)」の形で記載し、商品名だけの表記は認められていません。
- マウスピース型矯正装置:マウスピース型(カスタムメイド)矯正歯科装置(インビザライン)
- セルフライゲーション:セルフライゲーションブラケット装置(クリッピー、デーモンシステム)
- リンガル:リンガルブラケット矯正装置(STB、ARIAS)
- 咬合誘導装置:歯列矯正用咬合誘導装置(ムーシールド、プレオルソ)
- アンカースクリュー:歯科矯正用アンカースクリュー
「インビザライン」だけ、あるいは「マウスピース矯正」だけでは不十分です。「インプラント矯正」も使えません。正しくは「歯科矯正用アンカースクリューを用いた矯正(歯科)治療」です。
認定資格の掲載ルール
装置だけでなく、資格の掲載にも制限があります。認定資格は「認定した学会+資格名」の形式で、略歴の中に強調なく書く形のみが認められています。 トップページやバナーでの掲載は禁止です。なお、「認定医」を「専門医」と書くのは虚偽にあたります。
例外として、日本歯科専門医機構認定の矯正歯科専門医のみ広告可能です。記載方法は「日本歯科専門医機構認定 矯正歯科専門医」。ただし、学会認定資格と併記する場合は限定解除要件が必要になります。
ここまでが「掲載するために満たすべきルール」です。ここからは、「そもそも掲載が禁止されている表現」を見ていきます。
NGワード一覧
以下の表現がサイト内に残っていれば、審査の指摘対象です。
- 最上級表現:「最先端」「最適」「ベスト」「最良」「最上」
- 比較表現:「日本でもトップレベル」「県内一」
- 数字を使った訴求:「症例数6,000件以上」「患者満足度99%」
- 効果の断定:「痛くない」「1年で終わる」「歯を抜かない」
- 範囲の誇張:「あらゆる症例に対応」
- 効能の拡大:「肩こりや頭痛も治る」
- 造語:「プチ矯正」「ブライダル矯正」「スピード矯正」「キッズ矯正」「シニア矯正」「美容矯正」等
- 営利企業の認定資格:「インビザライン認定ドクター」「ダイヤモンドプロバイダー」
- セミナー等の経歴:研修会・講習会の参加歴、講師歴、certificate
見落としやすいポイントを補足します。
造語は一般的に使われている表現であっても禁止です。 「プチ矯正」だけでなく、「ブライダル矯正」「オーダーメイド矯正」「ティーンズ矯正」「ホワイトワイヤー矯正」など、業界で広く使われている通称もすべて該当します。
効能の拡大は、学会の広告ガイドラインでとりわけ厳しく見られている領域です。噛み合わせの改善で肩こりが軽減するといった書き方もNG。矯正治療の効果を科学的に裏づけられた範囲に限定するという学会の立場が背景にあり、医療広告ガイドラインの範囲では問題にならない表現であっても、学会基準では指摘対象になりえます。
その他の禁止事項
NGワードに加えて、以下の掲載も禁止されています。
メーカーのロゴ・画像・動画について。矯正歯科医療機器メーカーが作成した画像、ロゴ、動画はすべて使用禁止です。インビザラインのロゴやメーカー提供のイメージ画像は削除が必要になります。自院で撮影した写真は問題ありませんが、メーカーロゴの写り込みには注意したほうが良いかもしれません。
体験談・口コミについて。患者やスタッフの治療体験談、クチコミは掲載できません。「テレビや雑誌で取り上げられました」といったメディア掲載実績も禁止対象です。
独自の治療法・フィロソフィーについて。自身が開発したとする治療方法や治療フィロソフィーも認められていません。マルチブラケット法の変法、機能的顎矯正装置の改変、マウスピース型矯正歯科装置の改変などが該当します。院長インタビューや「当院の特徴」ページで独自の治療哲学を載せているなら修正が必要です。
「無料相談」の使用制限について。「無料相談」の表記が認められているのは料金表ページだけです。 トップページのコンセプト欄、バナー、カウンセリングの流れのページでは、実際に無料であっても掲載が認められていません。「無料相談受付中」のバナーをトップに出しているサイトはよく見かけますが、すべて修正対象です。
審査期間中にサイトを非公開にするのは絶対NG

ここまでの項目を見て、「全部直すのは無理だ」と感じた方もいるかもしれません。そうなると頭をよぎるのが、「審査の間だけサイトを落として、終わったら元に戻せばいいのでは」という考えです。
これが一番やってはいけない判断です。
2026年度から、「一時的に落としただけ」と審査員が判断した場合、一定期間後にサイトが再確認される仕組みになっています。発覚すれば通過証明書の取り消しです。修正するか、該当コンテンツを恒久的に削除するか。現状選択肢はこの二択しかありません。
ガイドライン対応が進まない理由と課題

対応しなければならないのはわかった。でも手が動かない。矯正歯科の現場で実際にぶつかる壁を整理します。
過去の症例情報が残っていない
8項目を書こうとした時点で手が止まります。数年前の症例の診断名、抜歯部位、治療費概算、その症例固有のリスクと副作用。ここまで正確に記録が残っているでしょうか。情報がなければ掲載を取り下げるしかなく、サイトの訴求力が落ちます。
修正範囲が広すぎる
装置名の正式表記ひとつ取っても、ページ本文だけでは済みません。見出し、メニュー、バナー、画像内のテキストなどサイト全体を洗い出す必要があります。テキストの修正ではなく、レイアウトそのものの再設計が必要になるケースも考えられるかもしれません。
セーフとアウトの線引きがわからない
NGワード一覧に載っている表現を消すだけなら単純な作業です。問題は一覧に載っていないグレーゾーンの表現です。「訴求力が高まる」と判断されれば指摘対象になりえますが、その境目は学会の広告ガイドラインの原文を読んだだけでは判断がつきません。実際の修正状況を踏まえたうえで、日々ガイドライン関連の知識を蓄積していかなければ、セーフとアウトの見極めは難しいのが実情です。
これだけの量を診療の合間に、すべてのページで漏れなく進めるのは相当な負担になると思います。
まとめ:弊社がサポートできること

HP倫理審査は、指摘が来てから直す時代ではなくなりました。クライアント自ら審査を通過し、証明書を取得して初めて資格申請ができる仕組みです。主体的に動かなければ、資格の更新ができません。
ただ、ここまで見てきた通り、対応のハードルは低くありません。症例情報の記録が残っていない、修正範囲がサイト全体に及ぶ、セーフとアウトの線引きが判断できない。しかも医療広告ガイドラインと学会基準の両方の知識が求められます。こうした課題が重なるからこそ、対応が進まないのが実情です。
弊社はこれらの課題に対して、以下の3つの面からサポートしています。
医療広告ガイドライン対応の9年の実績
弊社は医療広告ガイドラインの対応に9年間取り組んできたWeb制作会社です。条文を読んだだけでは判断できないグレーな表現の扱いや、修正がサイト全体に及ぶときの優先順位のつけ方は、実際の事例を積み重ねないとわかりません。9年分の事例があるので、「この表現は指摘されやすい」「ここから直す方が早い」といった判断を具体的にお伝えできます。
矯正歯科特有の文脈に対応した歯科サイトの制作実績
矯正歯科のサイトには、症例写真、装置の説明、認定医・指導医の表示など、業界特有のコンテンツがあります。弊社は歯科領域のサイト制作を多く手がけており、装置名の正式表記、症例の8項目、資格の掲載ルールなど、学会GL独自の基準にも対応します。症例情報が足りない場合に取り下げるか残すか、どのページから直すかといった判断もお伝えできます。
公開して終わりではない運用サポート
サイトは作って納品したら終わり、ではありません。公開後の症例追加やページ更新、HP倫理審査で条件付き通過になった際の1ヶ月以内修正、再審査での指摘対応まで、専任の担当者がサポート。 制作の経緯を把握しているので、修正対応もスムーズに進められます。
※弊社のサイト制作・運用は日本矯正歯科学会医療広告ガイドラインの審査結果を保証するものではありません。ただ、どこが引っかかりそうか、何から手をつけるべきかは具体的にお伝えできます。「資料は読んだけど、どこから手をつければいいかわからない」という方は、ぜひ一度ご相談ください。
※この記事は2026年4月時点の状況に基づいています。特に日本矯正歯科学会医療広告ガイドラインは定期的に改訂されることがあります。最新の状況については、お問い合わせの際にご確認ください。
株式会社ゼロメディカル・主任Webライター
1988年生まれ。大学卒業後、教育分野と出版業界での経験を経て、2016年、株式会社ゼロメディカルにWebライターとして入社。これまでに、歯科医院、動物病院、クリニック、整骨院など、医療分野を中心に、200人以上の経営者を取材。1000以上の記事を執筆した経験を持つ。医療分野のほか、教育、法務、AI分野への造詣も深い。現在、人にしか書けない独自の記事を追求中。






