病院とクリニックの違い|開業医に求められる役割など徹底解説!
「病院とクリニックの違いが詳しく知りたい」
「病院やクリニック開業医に求められる役割ってなに?」
開業にあたっては、病院とクリニックの違いを今一度明確しておきたいですよね。
本記事では、病院とクリニックの違いやよくある質問、病院やクリニック開業医に求められる役割などについて解説します。
ぜひご一読いただき、病院とクリニック運営にお役立てください。
病院とクリニックの違い
本項目では、病院とクリニックの違いをご説明します。
入院患者の病床数
病院とクリニックの違いにおいて、最も明確な違いのひとつが「病床数」です。
医療法によると、病院は20床以上の病床を有する医療機関として定義されています。
大規模な総合病院になると、500床、あるいは1000床を超える施設も存在します。
一方、クリニックは基本的に無床、もしくは19床以下の小規模な医療機関になります。
実際には、多くのクリニックは入院設備を持たず、外来診療を中心としたサービスを提供しています。
患者に対して日帰りの診療を行い、症状が深刻化した場合は連携する病院へ紹介するケースが一般的です。
構造設備
病院の構造設備は、入院患者に対応するための様々な機能を備えています。
手術室、集中治療室、放射線検査室、検査室など専門的な設備が充実しており、複数の診療科に対応した診察室や処置室が設けられています。
また、入院患者のための病棟や食事を提供する給食施設、リハビリテーション室なども完備されていることがほとんどです。
これに対し、クリニックの設備は比較的シンプルです。
基本的には外来診療に必要な診察室、処置室、小規模な検査設備などが中心となります。
専門性の高いクリニックでは、その分野に特化した検査機器や治療機器を導入していることもありますが、全体的な規模としては病院よりも小さく、特定分野に焦点を当てた構成となっています。
人員配置(医師・スタッフの数)
病院では複数の診療科に対応するため、多数の医師が勤務しています。
また、入院患者のケアを行う看護師も多く、医療法では入院患者と看護師の比率が定められています。
加えて、病院には医師や看護師以外にも、薬剤師、放射線技師、臨床検査技師、理学療法士、作業療法士、栄養士など多様な医療専門職が在籍しています。
事務職員も多数配置され、受付、会計、医療事務、病棟クラークなど様々な役割を担っています。
一方、クリニックの場合は、院長である医師が1名、もしくは数名の医師と、それを支える看護師、医療事務スタッフという小規模な体制が一般的です。
専門クリニックによっては、その分野に特化した専門スタッフが在籍していることもありますが、病院と比較すると人員配置はコンパクトです。
役割
病院は入院治療を主体とする医療機関であり、中度から重度の疾患に対応することができます。
また、大きな特徴として、内科・外科・整形外科・放射線科・麻酔科など多岐にわたる診療科を有していることが挙げられます。
これにより、複数の専門医が連携して治療方針を決定し、様々な角度から患者の状態を評価することが可能となります。
例えば、がん治療においては、外科医、腫瘍内科医、放射線科医、病理医などが集まり、最適な治療法を検討するカンファレンスが行われます。
一方、クリニックは外来診療を中心とした医療機関です。
日常的な疾患や軽度の症状の診察・相談を主な役割としており、地域医療の最前線として機能しています。
かぜ症状への対応や、高血圧・糖尿病などの慢性疾患のコントロール、定期的な健康チェックなどが主な診療内容となります。
診療報酬
病院における診療報酬は、入院基本料や手術料など、高度で長期的な医療行為に対する報酬が中心となります。
特に、人工関節置換術やがん手術などの大きな手術では、手術料そのものに加え、入院管理料、麻酔管理料、リハビリテーション料など、多くの項目が加算されることになります。
また、急性期・回復期・慢性期といった治療ステージごとに報酬体系が細分化されており、非常に複雑な構造となっています。
一方、クリニックの診療報酬は、主に外来診療に対する報酬が中心です。
初診料、再診料、各種検査料、処方料などが基本的な報酬項目となります。
例えば、血液検査と処方箋発行を含む一般的な外来診療では、数千円規模の診療報酬となることが多いです。
クリニックは基本的に入院設備を持たないため、入院基本料を算定することはできません。
診療時間も病院と比べて短時間であることが多く、これが診療報酬の違いにもつながっています。
施設数
病院は全国で約8000施設であり、そのうち大半が100床以上の規模を持っています。
これに対し、クリニック(診療所)は全国に約100000施設以上存在しており、数の上では病院の12倍以上にもなります。
この数字からも、クリニックが身近な医療機関として地域医療の基盤を支えていることがわかります。
病院やクリニック開業医に求められる役割
本項目では、病院やクリニック開業医に求められる役割についてお伝えします。
医療提供者としての臨床能力
開業医にとって、確かな臨床能力は最も基本的かつ重要な要素です。
病院勤務医とクリニック開業医では、求められる臨床スキルの性質が異なります。
病院勤務医の場合、各専門領域における高い専門性と重症患者への対応力が必須となります。
例えば、救急外来での複雑な外傷処置や、がんの手術計画の立案と実施など、深い専門知識と高度な技術が求められます。
一方、クリニック開業医の場合は、幅広い年齢層や多様な症状に対する一次対応能力が重視されます。
患者が最初に訪れる「医療の入口」として、様々な疾患の可能性を考慮しながら適切な初期対応を行う必要があります。
また、自身の診療範囲を超える場合には、適切なタイミングで専門医療機関へ紹介する判断力も重要です。
地域社会・地域医療との信頼関係の構築
開業医は地域に根ざした「顔の見える医療」の実現者です。
患者だけでなく、その家族や生活背景を理解した上での継続的な診療が求められます。
地域住民との長期的な信頼関係の構築は、医療の継続性と患者満足度に直結する重要な要素です。
また、開業医は地域連携のハブとしての役割も担います。
他の医療機関、訪問看護ステーション、介護事業者などとの情報共有を積極的に行い、「患者中心の地域包括ケア」を支える存在となることが期待されています。
在宅医療の需要が高まる中、こうした連携の重要性は今後さらに増していくでしょう。
経営者・マネージャーとしての能力
開業医は医師であると同時に、クリニックという組織の経営者でもあります。
医療の質と経営の両立という難しい課題に取り組む必要があります。
人的資源の管理は開業医の重要な役割の一つです。
看護師、医療事務、放射線技師など少人数のスタッフで運営されるクリニックでは、一人一人の存在が大きく、職場の雰囲気やチーム連携の構築が不可欠です。
スタッフのモチベーション管理や適切な業務分担、教育体制の整備なども開業医の責任となります。
経営的判断も求められます。
医療機器の導入や感染症対策のための設備投資、診療時間・診療体制の見直しなど、様々な判断を自ら決定し実行しなければなりません。
これらの判断は患者サービスの質向上と経営の持続可能性のバランスを考慮して行われるべきでしょう。
これらの経営者・マネージャーとしての能力は、医学教育では十分に教えられていない部分であり、開業を考える医師はこうした能力も意識的に養っていく必要があります。
病院やクリニックに必要不可欠な集患対策
病院やクリニックに必要不可欠な集患対策についてご説明します。
明確なコンセプトとブランディング
クリニックが患者に選ばれるためには、「どんな人に」「どんな価値を」届けるかという明確なコンセプトが必要です。
クリニック名・ロゴ・内装・ウェブデザイン・パンフレットなど、あらゆる点でコンセプトを一貫して表現しましょう。
例えば、女性向け婦人科クリニックなら、「デリケートな悩みを安心して話せる空間」というコンセプトを掲げ、内装には明るく清潔感のあるパウダールームや個別ブースを設けてプライバシーへの配慮を示す。
ロゴやカラーはピンクやベージュ系の柔らかい印象に統一し、受付スタッフの接遇も徹底することで、患者が緊張せずに相談できる環境を作るなどするとよいでしょう。
地域における独自のブランディングを確立することで、「あの症状ならあのクリニック」と患者に認識されるようになり、紹介や口コミによる新規患者獲得も容易になるでしょう。
ホームページなどウェブでの情報発信
現代の患者はまず「検索」から医療機関を選ぶことが多いため、ウェブ上の情報が来院の是非を大きく左右します。
特に「初診でも安心して行けるか」「どんな治療・検査ができるのか」が一目でわかるサイト設計は重要です。
例えば、ホームページには医師の写真と専門領域、患者へのメッセージを掲載し、医師の人となりが伝わることで初診の不安を軽減。
診療時間・アクセス・駐車場情報・バリアフリー対応などの基本情報、初診時の流れ、予約方法、よくある質問(FAQ)なども明確に記載するとよいでしょう。
また、診療内容は症状や疾患ごとにページを設け、患者が検索するキーワードに合わせたコンテンツを用意することで、検索エンジンからの流入を期待できます。
スタッフ対応・口コミ評価
医療技術の高さも重要ですが、一般患者にとって「優しい声かけ」「わかりやすい説明」などの対応は、医療技術以上に印象に残るものです。
受付・看護師・医師すべてのスタッフの対応が「医院の印象」を左右し、その印象が口コミとして広がります。
例えば、初診患者には診療の流れを事前に丁寧に案内することで不安を軽減したり、検査で緊張している高齢者に看護師が笑顔で付き添い説明したりするなど、患者心理に配慮した対応が重要です。
また、診察後に「わからないことはありませんか?」と一言添えるだけでも、患者満足度は大きく向上するでしょう。
近年、Googleビジネスプロフィールや医療ポータルサイトなどの口コミが、初診患者の判断材料として重要性を増しています。
良い口コミには感謝の意を示し、悪い口コミにも冷静かつ誠実に返信して改善姿勢を示すことが信頼獲得につながります。
病院とクリニックの違い:よくある質問
本項目では、病院とクリニックの違いについてよくある質問にお答えします。
医療機関の名称の付け方にルールはある?
医療機関の名称については、実は明確な法的ルールが存在します。
「病院」「クリニック」といった呼び方は単なる好みではなく、医療法によって厳密に定義されています。
病院とは、入院ベッド(病床)が20床以上ある医療施設を指します。
一方、クリニック(あるいは診療所)は、入院ベッドが0〜19床の医療施設となります。
つまり、施設の規模によって呼称が法的に区分されているのです。
名称の自由度については、「クリニック」という言葉は意外にも法律上の正式な分類名ではなく、一般的な通称です。
診療所であれば、「●●クリニック」「●●医院」「●●診療所」など、さまざまな名称を自由に選ぶことができます。
これは開設者の裁量に委ねられています。
しかし、「●●病院」という名称を使用するためには、実際に20床以上の入院設備を備えていることが法律で定められた条件となります。
これに違反して「病院」を名乗ることはできません。
クリニックは医師免許がなくても開業できる?
クリニック(診療所)の開業については、よくある誤解がありますが、原則として開設者または管理者が医師である必要があります。
医療法では、医療機関の開設・運営には厳格な規定が設けられており、診療行為を行うためには適切な資格が求められます。
例外的に、医師以外でも開業できるケースとしては、医療法人や企業が開設者となる場合が挙げられます。
しかし、この場合でも医師を管理者(院長)として置くことが法律で義務付けられています。
つまり、経営主体と医療提供者が分離していても、実際の医療行為を監督する責任者は必ず医師でなければならないのです。
重要なのは、医師免許を持たない人が独自に診療を行うことは医師法違反となり、違法行為に該当するという点です。
医療は人命に関わる行為であるため、適切な資格と知識を持つ者が行うべきだという考えに基づいています。
病院にはどんな種類がある?①:(一般)病院
医療法によれば、「病院」とは20床以上の入院施設を有する医療機関を指します。
この入院施設の有無と規模が、クリニック(診療所)との最も基本的な違いとなります。
病院は入院治療を提供できることから、手術や長期的な治療が必要な患者に対応することができます。
病院は機能や規模によってさらにいくつかの種類に分けられます。
一般的な「一般病院」は、内科、外科、小児科など複数の診療科を持ち、地域の入院需要に応える役割を担っています。
病床数は数十床から数百床程度までさまざまで、それぞれの地域の医療ニーズに合わせた規模となっています。
病院にはどんな種類がある?②:特定機能病院
特定機能病院は、日本の医療システムの中でも特に高度な医療を担う中核的な存在です。
この制度は1992年の医療法改正により創設され、厚生労働大臣が承認する特別な位置づけの医療機関となっています。
特定機能病院の定義として、高度な医療の提供、医療技術の開発・評価、高度医療に関する研修の実施といった役割を担うことが法律で定められています。
主に大学病院や国立がんセンターなどの国立高度専門医療研究センターがこれに該当し、医療の質や安全管理体制、臨床研究体制が整っていることが指定の条件となっています。
特定機能病院の主な特徴としては、高度先進医療や難治性疾患への対応能力が挙げられます。
一般の病院では対応が難しい複雑な疾患や、標準治療では効果が見られない症例に対して、最先端の治療法を提供することができます。
また、PET-CTやダヴィンチに代表されるロボット手術システムなど、最新の医療機器を多数導入していることも特徴です。
さらに、特定機能病院は医学部学生や研修医の教育機能も兼ねており、次世代の医療人材の育成にも貢献しています。
このような多機能性が特定機能病院の大きな特徴といえるでしょう。
病院にはどんな種類がある?③:地域医療支援病院
地域医療支援病院は、地域医療の要として重要な役割を担う医療機関です。
この制度は1997年の医療法改正により創設され、地域の開業医(クリニック)や中小病院と連携しながら、紹介患者の受け入れや救急医療などを担う病院として位置づけられています。
地域医療支援病院の指定は、都道府県知事によって行われます。
指定を受けるためには、紹介率が一定水準以上であること(例:紹介率65%以上)、救急医療を提供していること、他の医療機関からの医療機器の共同利用に対応していることなどの条件を満たす必要があります。
地域医療支援病院の主な特徴は、紹介患者の診療に重点を置いていることです。
地域のクリニックで初期診療を受けた患者が、より専門的な検査や治療のために紹介されてくるという流れを基本としています。
また、24時間体制の救急医療体制を整備していることも大きな特徴です。
地域で発生した救急患者を受け入れ、適切な初期対応から入院治療までを提供します。
さらに、地域の開業医への支援という役割も担っており、CTやMRIなどの高度医療機器の共同利用や、地域の医療従事者向けの研修の実施なども行っています。
このように、地域医療の「ハブ」としての機能を果たしているのです。
病院にはどんな種類がある?④:臨床研究中核病院
臨床研究中核病院は、医療イノベーションを推進する重要な役割を担う医療機関です。
この制度は2015年に開始され、新薬や新治療法の開発、治験の実施といった臨床研究の中核を担う病院として厚生労働省が認定しています。
臨床研究中核病院の主な役割は、医薬品や医療機器の臨床試験(治験)を国際水準で実施することです。
新たな治療法が実際の患者に適用できるかどうかを科学的に検証する場として機能しています。
認定を受けるためには、臨床研究の実施体制、品質管理体制、安全管理体制などが厳格な基準を満たしていることが条件となります。
臨床研究中核病院の特徴として、医薬品・医療機器の臨床試験を高水準で実施できる体制が整っていることが挙げられます。
専門のスタッフが配置され、精密な試験計画に基づいた研究が行われています。
また、GCP(Good Clinical Practice:治験実施基準)と呼ばれる国際基準を遵守する倫理体制と審査委員会を持っていることも重要な特徴です。
被験者(患者)の安全確保と説明責任を重視していることも大きな特徴であり、治験に参加する患者の権利や安全が最大限に守られるよう、細心の注意が払われています。
まとめ
医療機関は「病床数」という明確な基準で区分されています。
病院は20床以上の入院設備を持ち、大規模な総合病院では1000床を超えることもあります。
一方、クリニックは無床または19床以下の小規模施設で、外来診療が中心です。
設備面では、病院は手術室や集中治療室などの専門設備を有し、多様な診療科と多職種の医療従事者がチームで働いています。
クリニックは診察室や基本的な検査設備を中心としたシンプルな構成で、医師1〜2名と少数のスタッフで運営されています。
開業医には三つの重要な役割があります。
まず「医療提供者」として幅広い症状に対応できる臨床能力と適切な紹介判断力が求められます。
次に「地域医療の担い手」として患者とその家族の背景を理解した継続的な診療が重要です。
さらに「経営者」としてスタッフ管理や投資判断、法令遵守の能力も必要となります。
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