「毛乳頭」という言葉を耳にしたことはありますか?
薄毛や抜け毛について調べていると、必ずといっていいほど登場するこの言葉。実は、毛乳頭は髪の毛が生えてくる仕組みの中心的な役割を担っている、とても重要な組織なんです。
毛乳頭は毛根の最も奥にある小さな組織で、髪の成長に必要な栄養を届けたり、毛母細胞に「髪を作れ」という指令を出したりしています。つまり、毛乳頭が元気かどうかが、髪の太さや成長スピードに大きく影響するということですね。
AGAなどの薄毛では、この毛乳頭の働きが弱まることで、髪が細く短くなっていきます。逆にいえば、毛乳頭の仕組みを理解することが、薄毛対策の第一歩になるんです。
この記事では、毛乳頭の基本的な構造や役割から、薄毛との関係、そして毛乳頭を健康に保つ方法まで、わかりやすく解説していきます。髪の健康を守るために、ぜひ参考にしてみてください。
- 毛乳頭は毛根の最深部にあり、髪の成長を司る司令塔
- AGAでは毛乳頭が縮小し、髪が細く短くなる
- 毛乳頭は死滅しにくく、適切な治療で回復が期待できる
- 結論:毛乳頭の働きを理解し、早めの対策を取ることが薄毛予防・改善の鍵です

2005年設立の株式会社ゼロメディカルで、医療・介護・福祉領域における経営支援や医療情報メディア運営、WEBマーケティングを統括。医療機関や関連施設の課題解決を支えるとともに、Kenkotto/Diamell/デンタルマイクロスコープClinic などの自社メディアを通じて、正確で分かりやすい情報を届ける体制づくりに取り組んでいる。
本記事では、医療機関の経営支援と医療メディア運営で培った知見にもとづき、情報の客観性・表記の妥当性・最新性を確認しています(※個別の診断・治療方針の判断は医師が行います)。
毛乳頭とは|髪の成長を司る重要な組織
髪の毛がどのように生えてくるか、考えたことはありますか?その仕組みの中心にいるのが「毛乳頭」です。毛乳頭は髪の成長をコントロールする、いわば髪の司令塔のような存在。ここでは、毛乳頭がどこにあり、どんな構造をしているのかを見ていきましょう。
毛乳頭の場所と構造
毛乳頭は、毛根の最も奥深くにある小さな組織です。髪の毛を抜いたときに根元についている丸い部分(毛球)の中に位置しています。大きさは直径0.2mm程度と非常に小さいですが、髪の成長には欠かせない存在なんです。
毛乳頭の内部には毛細血管が入り込んでおり、血液を通じて栄養や酸素を受け取っています。この血管からの栄養供給が、髪の成長を支える大切な役割を果たしているわけですね。毛乳頭を取り囲むように「毛母細胞」が存在し、毛乳頭からの指令を受けて細胞分裂を繰り返すことで、髪の毛が作られていきます。
毛乳頭は「毛乳頭細胞」という特殊な細胞で構成されており、この細胞が成長因子などの物質を分泌することで、毛母細胞の活動をコントロールしています。
毛乳頭と毛母細胞の違い
毛乳頭と毛母細胞は、よく混同されがちですが、役割がまったく異なります。簡単にいうと、毛乳頭は「指示を出す司令官」、毛母細胞は「実際に髪を作る工場」という関係です。
毛乳頭は自分自身で髪の毛を作ることはできません。代わりに、毛母細胞に対して「成長しなさい」という信号を送り続けています。この信号を受けた毛母細胞が活発に分裂・増殖することで、髪の毛が伸びていくんですね。
つまり、毛乳頭が元気でないと毛母細胞への指令が弱くなり、髪の成長が鈍ってしまいます。逆に、毛母細胞が健康でも、毛乳頭からの指令がなければ髪は育ちません。両者が協力し合うことで、初めて健康な髪が生まれるということです。
髪の毛が生える仕組み|毛乳頭の3つの役割
毛乳頭が髪の成長にとって重要だということはわかりましたが、具体的にどんな働きをしているのでしょうか。毛乳頭には大きく分けて3つの役割があります。それぞれの機能を理解することで、薄毛のメカニズムもより深く理解できるようになりますよ。
毛母細胞に成長の指令を出す
毛乳頭の最も重要な役割は、毛母細胞に対して「髪を作りなさい」という成長シグナルを送ることです。毛乳頭細胞は、さまざまな成長因子やサイトカインと呼ばれる物質を分泌し、毛母細胞の細胞分裂を促進しています。
代表的な成長因子には、FGF-7(線維芽細胞成長因子)やIGF-1(インスリン様成長因子)などがあります。これらの物質が毛母細胞に届くと、細胞分裂のスイッチが入り、新しい細胞が次々と生まれていきます。この細胞が角化(硬くなること)しながら上に押し上げられ、最終的に私たちが目にする髪の毛になるんですね。
血管から栄養を届ける
毛乳頭は、血液中の栄養素を髪の成長に使えるように中継する役割も担っています。毛乳頭の内部には毛細血管が入り込んでおり、ここから酸素やアミノ酸、ビタミン、ミネラルなどの栄養素を受け取っています。
受け取った栄養は毛乳頭を経由して毛母細胞に届けられ、髪のタンパク質(ケラチン)を作る材料として使われます。髪の毛の約80〜90%はケラチンというタンパク質でできているので、タンパク質の元となるアミノ酸の供給は特に重要なんです。
ヘアサイクルをコントロールする
毛乳頭は、髪の毛の生え変わりのリズム「ヘアサイクル(毛周期)」もコントロールしています。髪の毛は永遠に伸び続けるわけではなく、成長期・退行期・休止期という3つの段階を繰り返しながら生え変わっています。
成長期(2〜6年)
髪が活発に成長する時期です。毛乳頭からの成長シグナルが盛んに出され、毛母細胞が活発に分裂を繰り返します。健康な髪の場合、この期間は2〜6年続き、1日に約0.3〜0.4mm伸びていきます。頭髪全体の約85〜90%がこの成長期にあります。
退行期(2〜3週間)
成長が徐々に止まる移行期間です。毛乳頭からの成長シグナルが弱まり、毛母細胞の分裂が停止します。毛球が縮小し、毛乳頭と毛母細胞の結合が緩んでいきます。この期間は約2〜3週間と短く、全体の約1%程度がこの時期にあたります。
休止期(3〜4ヶ月)
髪の成長が完全に止まり、抜け落ちる準備をする時期です。この間、毛乳頭は休息状態にありますが、次の成長期に向けた準備を進めています。約3〜4ヶ月後、新しい髪が生えてくると同時に古い髪が自然に抜け落ちます。全体の約10〜15%がこの休止期にあります。
毛乳頭と薄毛・AGAの関係
ここまで毛乳頭の基本的な役割を見てきましたが、では薄毛やAGAとはどのような関係があるのでしょうか。実は、AGAの発症メカニズムには毛乳頭が深く関わっています。毛乳頭で何が起きているのかを知ることで、なぜ髪が薄くなるのかが理解できます。
AGAで毛乳頭に起きる変化
AGAは、男性ホルモンDHTが毛乳頭に作用することで発症します。テストステロンが5α還元酵素によってDHTに変換され、このDHTが毛乳頭細胞にある男性ホルモン受容体と結合すると、成長を抑制する信号が出されるようになるんです。
具体的には、毛乳頭からTGF-βやDKK1といった成長抑制因子が分泌されるようになります。これらの物質は毛母細胞の働きを弱め、髪の成長期を短縮させてしまいます。
その結果、髪が十分に太く長く成長する前に抜け落ちてしまうというわけです。
毛乳頭が小さくなると髪が細くなる
AGAが進行すると、毛乳頭自体が徐々に縮小していきます。毛乳頭のサイズと髪の太さには相関関係があり、毛乳頭が小さくなるほど髪も細くなります。
これが「軟毛化」と呼ばれる現象です。太くてしっかりした髪(硬毛)が、産毛のような細い髪(軟毛)に変化していきます。毛乳頭が小さくなることで、毛母細胞への栄養供給や成長シグナルも弱くなり、結果として髪を太く育てる力が失われてしまいます。
AGAの初期段階では、髪が完全に抜けるというより、この軟毛化が進行していくことが多いです。見た目では「髪が薄くなった」と感じますが、実際には毛穴はまだ残っていて、細い毛が生えている状態なんですね。
毛乳頭は死滅する?回復できる?
「毛乳頭が死滅したら、もう髪は生えてこない」という話を聞いたことがあるかもしれません。確かに毛乳頭が完全になくなれば髪は生えませんが、実際のところ、毛乳頭は簡単には死滅しません。
AGAで髪が薄くなっている状態でも、多くの場合、毛乳頭は縮小しているだけで消失はしていません。だからこそ、適切な治療を行うことで、縮小した毛乳頭が再び大きくなり、髪が太く成長する可能性があるんです。
フィナステリドやデュタステリドといったAGA治療薬は、DHTの産生を抑制することで毛乳頭へのダメージを軽減します。また、ミノキシジルは毛乳頭周辺の血流を改善し、成長因子の産生を促進する効果があります。
毛乳頭を元気に保つためにできること
毛乳頭の健康を維持することは、髪の健康を守ることに直結します。では、日常生活の中で毛乳頭をケアするには、どんなことに気をつければよいのでしょうか。ここでは、今日から実践できる方法をご紹介します。
頭皮の血行を良くする
毛乳頭に栄養を届けているのは血液です。頭皮の血行が悪くなると、毛乳頭への栄養供給も滞りがちになります。そのため、頭皮の血流を促進することは、毛乳頭の健康維持に役立つと考えられています。
具体的な方法としては、シャンプー時に指の腹で頭皮を優しくマッサージすることがおすすめです。強くこすったり爪を立てたりするのは逆効果なので、あくまで優しく、頭皮を動かすイメージで行いましょう。また、定期的な有酸素運動も全身の血行促進に効果的です。入浴時に湯船に浸かって体を温めることも、血行改善につながりますね。
髪に良い栄養をとる
髪の毛の主成分ケラチンはタンパク質の一種です。タンパク質を十分に摂取することは、髪の材料を供給するという意味で大切なんです。肉、魚、卵、大豆製品などから良質なタンパク質を摂るよう心がけましょう。
また、亜鉛はケラチンの合成に関わるミネラルとして知られています。牡蠣、牛肉、ナッツ類などに多く含まれています。ビタミンB群も髪の健康維持に関係しており、レバーや緑黄色野菜から摂取できます。
生活習慣を見直す
睡眠不足やストレスは、ホルモンバランスや血行に影響を与えます。間接的に毛乳頭の働きにも影響する可能性があります。特に、成長ホルモンは睡眠中に多く分泌されるため、質の良い睡眠を確保することは髪の健康にとっても意味があります。
過度な飲酒も栄養の吸収を妨げる可能性があるため、適度な量を心がけたいところです。ストレスを完全になくすことは難しいですが、自分なりのリフレッシュ方法を見つけて、上手に発散することが大切ですね。
AGA治療という選択肢
生活習慣の改善だけでは対処しきれない場合、医療機関でのAGA治療を検討するのも一つの方法です。日本皮膚科学会のガイドライン(2017年版)では、フィナステリドやデュタステリドの内服、ミノキシジルの外用が推奨度Aとされています。
フィナステリドやデュタステリドは、DHTの産生を抑えることで毛乳頭へのダメージを軽減します。ミノキシジルは毛乳頭周辺の血流改善や成長因子の産生促進に働きかけます。これらの治療薬は、医師の診察のもと処方を受けることができます。
毛乳頭が大きく萎縮する前に対策を始めることで、より良い結果が期待できます。
よくある質問(Q&A)
毛乳頭について、よく寄せられる質問にお答えします。
毛乳頭と毛母細胞、どちらが大切?
どちらも髪の成長には欠かせない存在で、優劣をつけることはできません。毛乳頭は「指令を出す司令官」、毛母細胞は「髪を作る工場」という関係にあり、両者が協力し合って初めて健康な髪が育ちます。強いて言えば、毛乳頭がなければ毛母細胞は活動できないため、毛乳頭の健康を維持することがより根本的なケアといえるかもしれませんね。
毛乳頭は白髪にも関係ある?
はい、関係があります。髪の色を決めるメラニン色素は、毛乳頭の近くにある「メラノサイト(色素細胞)」という細胞で作られています。加齢などによりメラノサイトの機能が低下すると、メラニンが作られなくなり、白髪になります。毛乳頭自体が白髪の直接的な原因ではありませんが、メラノサイトは毛乳頭周辺の環境の影響を受けるため、広い意味では関連があるといえます。
毛乳頭を傷つける習慣はある?
毛乳頭自体は頭皮の深いところにあるため、通常の生活で直接傷つけることは少ないです。ただし、強い力で髪を引っ張り続けるヘアスタイル(きつめのポニーテールやエクステンションなど)は、牽引性脱毛症を引き起こし、毛根全体にダメージを与える可能性があります。また、過度な紫外線暴露や、合わないヘアケア製品による頭皮の炎症も、間接的に毛乳頭の環境を悪化させることがあります。
毛乳頭の再生医療は実用化されている?
毛乳頭細胞を培養して薄毛治療に応用する研究は世界中で進められていますが、2025年現在、一般的な治療として広く実用化されている段階ではありません。日本でも一部のクリニックで研究段階の治療が行われているケースはありますが、効果や安全性については長期的なデータが十分に蓄積されていません。将来的には有望な選択肢になる可能性がありますが、現時点では既存の治療法(内服薬・外用薬など)が第一選択となっています。
まとめ
毛乳頭は、髪の毛の成長を司る非常に重要な組織です。毛根の最も奥に位置し、毛母細胞に成長の指令を出し、血管から栄養を届け、ヘアサイクルをコントロールするという3つの役割を担っています。
AGAなどの薄毛では、男性ホルモンDHTの影響で毛乳頭の働きが弱まり、髪が細く短くなっていきます。しかし、毛乳頭は簡単には死滅せず、適切な治療を行うことで回復が期待できるケースも多いんです。
毛乳頭を健康に保つためには、頭皮の血行促進、バランスの良い栄養摂取、生活習慣の見直しといった日常的なケアが大切です。そして、薄毛が気になる場合は、毛乳頭が大きく萎縮する前に専門医に相談することが、より良い結果につながります。
早めの対策が、将来の髪を守る第一歩になりますよ。

2005年設立の株式会社ゼロメディカルで、医療・介護・福祉領域における経営支援や医療情報メディア運営、WEBマーケティングを統括。医療機関や関連施設の課題解決を支えるとともに、Kenkotto/Diamell/デンタルマイクロスコープClinic などの自社メディアを通じて、正確で分かりやすい情報を届ける体制づくりに取り組んでいる。
本記事では、医療機関の経営支援と医療メディア運営で培った知見にもとづき、情報の客観性・表記の妥当性・最新性を確認しています(※個別の診断・治療方針の判断は医師が行います)。









