AGA治療は基本的に3種類の治療薬を用いて行うものです。しかし、全てを同時に使うことはなく、使う薬も料金も、クリニックやAGAの進行度合いによって異なります。
自分の症状の場合、どの薬を利用して毎月いくらぐらい費用がかかるのかを知りたい方は多いでしょう。
そこで本記事ではAGA治療の基本的な知識と、それぞれの薬の効果と副作用、およそいくら程度の料金がかかるのかについて紹介するため、ぜひ参考にしてください。

AGA治療薬の基本的な理解
まず結論として、AGA治療は「フィナステリド」「デュタステリド」「ミノキシジル」の3種類の薬のうちから進行度合いや目的、予算に応じて組み合わせを選んで行うことが一般的です。
AGA治療薬に関する簡単な解説と、薬を用いて治療することの重要性について紹介するため、ぜひ参考にしてください。
AGA治療薬とは
AGAとは「男性型脱毛症」のことです。
メカニズムを解説すると、まず母方の親戚から遺伝した「5α還元酵素」と男性ホルモンである「テストステロン」が結合することにより「DHT」という悪玉男性ホルモンが発生します。
これが、髪の毛が生え変わる周期であるヘアサイクルを乱してしまい、髪の毛が生えづらく、抜けやすくなるという病気です。進行性のものであり、治療を続けなければ髪の毛が減っていくだけでなく、薬を飲むのをやめてしまうと、治療で髪の毛が生えた後でも、再び脱毛することがあります。
AGA治療薬の役割はDHTの発生を防いでAGAを予防する「フィナステリド」「デュタステリド」と発毛を促進する「ミノキシジル」で分けられます。
まだAGAが深刻でない方はミノキシジルを利用しなくて良いこともありますが、すでに薄毛が気になる方、フィナステリドかデュタステリドと併せてミノキシジルを利用する必要があります。
AGA治療における薬物療法の重要性
AGA治療は薬を用いて行うものであり、改善の効果は日本皮膚科学会の研究により立証されています。
フィナステリドに関しては、日本人男性414名を対象とした48週間の比較試験が行われました。
- 1日1mgを投与された被験者は58%が「軽度改善」以上
- 1日0.2mgを投与された被験者は54%が「軽度改善」以上
出典:男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版 日本皮膚科学会
以上のような結果が得られ、AGA改善の効果が期待できることがわかります。
デュタステリドも、国内で実施された非ランダム化試験で効果が確認されています。52週間の観察期間中、毛髪の量や直径が有意に増加したことが報告されており、医師による評価でも改善が確認されています。
また、ミノキシジルの外用薬も発毛効果が立証されています。300名の男性被験者を対象とした24週までのランダム化比較試験は以下のような結果になり、発毛効果が期待できます。
- 1%ミノキシジル外用薬を塗布した被験者が脱毛部1平方cm以内の非軟毛数が平均21.2本増加
- 5%ミノキシジル外用薬を塗布した被験者が脱毛部1平方cm以内の非軟毛数が平均26.3本増加
出典:男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版 日本皮膚科学会
ミノキシジルの内服薬については、まだ臨床試験が行われていませんが、塗布するだけでここまで発毛効果が期待できる薬であるため、内服薬として処方するクリニックも豊富にあります。
また、AGA治療は早い段階で治療を始めることが大切であるとされています。進行性の病気であるため、放置すればするほど髪の毛は薄くなり、治療なしに改善することは基本的にありません。
早い段階で治療をしておけばAGAを予防する薬を飲むだけで治療できますが、薄毛が進行してしまった場合は、ミノキシジルの外用薬、または内服薬も併用して発毛を目指す必要があります。
もちろん、ミノキシジルを利用する分、追加で料金がかかります。そして、服用に際して全く体に負担がないわけではないため「費用」と「健康」のいずれの側面から考えても、早めに治療を始めることを推奨します。
代表的なAGA治療薬の詳細
続いて、代表的なAGA治療薬を3種類、それぞれ効果や作用するメカニズム、服用方法などについて紹介します。
ご自身にはどの飲み合わせが良いのか選ぶための参考にしてください。
フィナステリド
フィナステリドは最も代表的なAGA治療薬であり、5α還元酵素の働きを抑制することでDHTの発生を防ぎ、ヘアサイクルを正常に戻す役割が期待できます。AGAの原因はこのDHTであるため、その発生を防ぐことでAGAを抑制できるのです。
したがって、主な役割はAGAを予防すること、進行を抑制することであり、大幅な発毛効果は期待できません。
しかし、全く発毛効果が期待できないわけではなく、ヘアサイクルが正常になることで髪の毛がまた生え始めることも期待できます。
ミノキシジルを利用したくない方、もしくは基本的な目的がAGAを予防することで「髪が少し増えれば良い」くらいの感覚の方は、フィナステリドだけで治療を行っても良いでしょう。
服用方法は、1日1回、0.2mg、または0.1mgを決まった時間に服用します。
デュタステリド
デュタステリドの基本的な目的や作用のメカニズムはフィナステリドと同じですが、5α還元酵素のⅠ型とⅡ型の両方を抑制できる点が異なります。
AGAの原因は5α還元酵素であり、Ⅰ型が原因なのか、Ⅱ型が原因なのかは人によって異なります。したがって、Ⅰ型が原因で薄毛になっている方は、デュタステリドを利用した方が良いでしょう。
ただし、Ⅱ型が原因でAGAを発症している人は体毛が濃くなりやすいなど、判断材料が無いわけではありませんが、自身で判断することは不可能に近いため、クリニックに赴いて診断してもらうことを推奨します。
服用方法は1日1回、0.5mgを服用することが一般的です。フィナステリドよりも体内に長く留まりやすいという特徴から「3日に1度の服用でOK」とお考えの方もいますが、個人差もあるので、自己判断ではなく医師に相談したうえで用量を考えてみてください。服用量については、利用するクリニックの医師に指示を仰ぐことを推奨します。
ミノキシジル
ミノキシジルは内服薬と外用薬の2パターンの利用方法があり、いずれも発毛効果が期待できます。毛細血管を広げ、血液の流れをスムーズにする効果や、髪の毛の成長を促す毛乳頭細胞に働きかけ、ヘアサイクルを延長させる働きが期待できます。
また、毛母細胞から作られる発毛因子の分泌を促進する効果や、毛乳頭細胞そのものを増殖させる働きもあることから、発毛を促す成分として位置付けられています。
内服薬を用いた実験結果はありませんが、服用することでより高い効果が期待できるとされており、多くのクリニックが処方しているため、医師に相談してみると良いでしょう。
使用方法としては、外用薬は朝晩2回、または1回薄毛が気になる部分に塗布し、内服薬は2.5mg〜5mgを1日1〜2回に分けて服用します。
各AGA治療薬の副作用と注意点
AGA治療を行うにあたっては、副作用や注意点を理解する必要もあります。あらかじめリスクを理解した上で、自分に合った、無理にない方法で治療することを推奨します。
フィナステリドの副作用
まず、フィナステリドの場合、リビドー減退が1%から5%の確率で発生し、勃起機能不全なども1%未満の確率で発症します。射精障害などの可能性があるため、パートナーがいらっしゃる方は相談してから治療を始めることを推奨します。
また、肝臓で代謝される薬であるため、肝臓に持病がある方は、あらかじめ医師に相談しておいた方が良いでしょう。
フィナステリドの副作用 | |||
---|---|---|---|
1~5%未満 | 1%未満 | 頻度不明 | |
過敏症 | そう痒症、じん麻疹、発疹 血管浮腫(口唇、舌、咽喉 及び顔面腫脹を含む) | ||
生殖器 | リビドー減退 | 勃起機能不全 射精障害 精液量減少 | 睾丸痛、血精液症、男性不 妊症・精液の質低下(精子濃 度減少、無精子症、精子運動 性低下、精子形態異常等) |
肝臓 | AST上昇、ALT上昇、 γ-GTP上昇 | ||
その他 | 乳房圧痛、乳房肥大、抑う つ症状、めまい |
デュタステリドの副作用
デュタステリドも、基本的にはフィナステリドと同様の副作用が懸念されます。また、乳房障害、いわゆる胸が大きくなるなどの副作用が1%以下の確率で報告されています。
不安な方は医師にしっかり相談した上で治療を始めた方が良いでしょう。
デュタステリドの副作用 | |||
---|---|---|---|
1%以上 | 1%未満 | 頻度不明 | |
過敏症 | 発疹 | 蕁麻疹、アレルギ ー反応、瘙痒症、 限局性浮腫、血管 性浮腫 | |
精神神経系 | 頭痛、抑うつ気分 | 浮動性めまい、味覚異常 | |
生殖系及び乳房障害 | 性機能不全(リビドー減退、勃起不全、射精障害) | 乳房障害(女性化乳房、乳頭痛、乳房痛、乳房不快感) | 精巣痛、精巣腫脹 |
皮膚 | 脱毛症(主に体毛脱落)、多毛症 | ||
消化器 | 腹部不快感 | 腹痛、下痢 | |
その他 | 倦怠感、血中CK増加 |
ミノキシジルの副作用
ミノキシジルの副作用としては、フィナステリドやデュタステリドと異なり、血行促進作用による動悸や息切れが挙げられます。また、成分が全身に運ばれるため、髪の毛だけでなく、体毛が濃くなる可能性もあります。
内服薬を利用する場合は、血圧を下げる作用があるため、立ちくらみや心疾患のリスクがあることを覚えておきましょう。
特に、ミノキシジルは大動脈から流れてくる血液の勢いを調整する血管や、心臓に血液を送る冠動脈に影響を与える場合があります。心臓が弱い方は医師に相談してから治療を始めることを推奨します。
ミノキシジル外用薬の副作用 | |
---|---|
関係部位 | |
皮膚 | 頭皮の発疹・発赤、かゆみ、かぶれ、ふけ、使用部位の熱感等 |
精神神経系 | 頭痛、気が遠くなる、めまい |
循環器 | 胸の痛み、心拍が速くなる |
代謝系 | 原因のわからない急激な体重増加、手足のむくみ |
治療薬の選び方と組み合わせ
AGA治療は正しい治療薬を選び、正しい組み合わせで、長く続けることが大切です。
例えば、若く、まだ「髪の毛が細くなり始めた」「抜け毛が少し多い気がする」程度の方ならば、フィナステリドやデュタステリドを用いて予防するだけで十分な効果が期待できます。
一方、30代〜60代の方で、かなり薄毛が目立っておりしっかりと発毛を目指したい方は、上記の薬に加えてミノキシジルを利用した方が良いでしょう。
また、肝臓や心臓などに持病がある方は可能な限り内服薬を避けたいため「理想通りの発毛を完全に実現」とはいかないかもしれませんが、ミノキシジルの外用薬だけを利用するくらいが良いかもしれません。
その他にも「あまり予算が割けない」「朝から晩まで顧客と会うため、ベタつく外用薬は避けたい」などそれぞれ事情があるでしょうから、全てを考慮した上で、最適な組み合わせで治療を進めましょう。
最新のAGA治療薬研究
最近では従来の治療薬を用いないAGA治療も注目されています。
例えば、自毛植毛は自分のAGAの影響を受けていない部分の髪を気になる部分に移植する治療方法であり、定着してしまえばヘアサイクルが正常に戻り、AGAの根本的な改善を期待できます。
50万円から150万円程度の費用がかかることがネックですが、予算に余裕がある方は検討しても良いでしょう。
また、低出力レーザーを用いた「LLLT」という治療法や、自分の幹細胞を培養して増やし、体内に戻して組織を再生させる幹細胞治療なども注目されています。
しかしこれらの治療方法はいずれも高額であり、また自毛植毛以外はまだAGA治療の主流な治療法としては利用されていません。
したがって、本記事で紹介した3つの治療薬を用いて改善を目指すことが基本であり「薬はあまり飲みたくない」という方や「予算に余裕があるから、一度試してみたい」という方におすすめです。
とはいえ、医学の進歩は凄まじいものがあるため、LLLTや幹細胞治療の研究が進み、さらに高い効果が期待でき、料金も安くなった場合は、AGAクリニックでの治療から乗り換えても良いかもしれません。
まとめ
今回はAGA治療薬の概要と基礎、どのような効果が期待できるか、副作用には何があり、どのようなメカニズムでAGA治療を目指すのかについて紹介しました。
AGA治療を始めるにあたっては「正しい情報」を得た上で行うことが大切です。副作用や長期的にかかる予算についてしっかりと理解した上で、どの治療法が自分に適しているかを考えてからクリニックに行くことを推奨します。
ぜひ、本記事で紹介した内容を踏まえた上であなたに合った治療を受けてください。