「最近、髪の毛が薄くなってきた気がする…」「生え際が後退している…」そんな悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
薄毛の原因を調べていると、必ずと言っていいほど目にするのが「DHT（ジヒドロテストステロン）」という言葉です。
DHTは男性ホルモンの一種で、AGA（男性型脱毛症）の直接的な原因物質として知られています。
結論からお伝えすると、DHTを適切に抑制することでAGAの進行を食い止め、発毛効果が期待できる場合があります。ただし、効果には個人差があります。
本記事では、DHTとは何か、なぜ薄毛を引き起こすのか、そしてどうすれば抑制できるのかを医学的根拠に基づいて詳しく解説していきます。
薄毛対策の第一歩として、まずはDHTについて正しく理解していきましょう。
2005年設立の株式会社ゼロメディカルで、医療・介護・福祉領域における経営支援や医療情報メディア運営、WEBマーケティングを統括。医療機関や関連施設の課題解決を支えるとともに、Kenkotto／Diamell／デンタルマイクロスコープClinic などの自社メディアを通じて、正確で分かりやすい情報を届ける体制づくりに取り組んでいる。
本記事では、医療機関の経営支援と医療メディア運営で培った知見にもとづき、情報の客観性・表記の妥当性・最新性を確認しています（※個別の診断・治療方針の判断は医師が行います）。
DHT（ジヒドロテストステロン）とは？テストステロンとの違い
DHT（ジヒドロテストステロン）は、男性ホルモン（アンドロゲン）の一種です。テストステロンよりも強力な作用を持ち、体内でさまざまな働きをしています。AGAの原因物質として知られていますが、DHTは本来、男性の身体機能に必要なホルモンでもあるんです。ここでは、DHTがどのように作られるのか、テストステロンとの違いについて解説していきます。
DHTが作られる仕組み｜5αリダクターゼの働き
DHTは、体内で一から作られるわけではありません。テストステロンが5αリダクターゼで変換されて生成されます。この変換に関わっているのが「5αリダクターゼ」という酵素です。
5αリダクターゼには2つのタイプがあります。Ⅰ型は全身の皮脂腺に多く存在し、Ⅱ型は前立腺や頭頂部・前頭部の毛包に多く分布しています。AGAに深く関わっているのは主にⅡ型で、頭皮でテストステロンをDHTに変換する役割を担っています。
この酵素の活性度は遺伝的な要因に左右されることが多く、5αリダクターゼの働きが活発な人ほどDHTが多く生成され、AGAを発症しやすい傾向にあります。つまり、薄毛になりやすいかどうかは、この酵素の活性度が一つの鍵を握っているわけです。
テストステロンとDHTの違いと相互関係
テストステロンとDHTは、どちらも男性ホルモンですが、その作用の強さや働く場所が異なります。テストステロンは筋肉の発達や骨密度の維持、性機能、精神面の安定など、全身的な男性機能に関わっています。
一方、DHTはテストステロンより強力にアンドロゲン受容体に結合するといわれています。胎児期には男性器の発達に必要不可欠ですが、成人以降は主に毛包や前立腺に作用します。
ここで重要なのは、テストステロン自体は髪の毛に悪影響を与えないということ。問題はテストステロンがDHTに変換され、頭皮の毛包に作用したときに起こります。DHTが毛包のアンドロゲン受容体と結合することで、髪の成長サイクルに異常が生じ、薄毛が進行していくのです。
DHTが体に与える影響｜薄毛以外の変化も解説
DHTは薄毛の原因として注目されがちですが、実は身体全体にさまざまな影響を与えています。DHTの作用を理解することで、自分の体に起きている変化の理由が見えてくることもあります。ここでは、薄毛以外にDHTが体に及ぼす影響について解説します。
皮脂分泌と体臭への影響
DHTは皮脂腺の活動を活発にする作用があります。そのため、DHTの分泌量が多い人は、顔や頭皮がべたつきやすい傾向にあります。頭皮の皮脂が過剰になると、毛穴の詰まりや炎症の原因にもなりかねません。
また、皮脂量の増加は体臭にも関係しています。皮脂が酸化したり、皮膚の常在菌によって分解されたりすることで、独特のにおいが発生することがあります。特に頭皮や顔、脇など皮脂腺が多い部位で気になることが多いです。
体毛やヒゲが濃くなる
興味深いことに、DHTは頭髪を薄くし、体毛やヒゲは濃くする作用があります。これは毛包の種類によってDHTへの反応が異なるためです。頭髪の毛包はDHTによって萎縮しますが、ヒゲや体毛の毛包は逆にDHTによって成長が促進されます。
そのため、AGAが進行している方の中には、ヒゲや体毛が濃いという特徴を持つ方も少なくありません。この現象を「DHTパラドックス」と呼ぶこともあります。
男性らしい体つきになる
DHTは男性の二次性徴に深く関わるホルモンです。思春期以降、声変わりや筋肉の発達、体毛の増加など、男性らしい身体的特徴の発現に貢献しています。
ただし、成人以降はこれらの役割がほぼ完了しているため、DHTの過剰な存在は薄毛や前立腺肥大といったデメリットの方が目立つようになります。DHTを適切なレベルに保つことが、健康維持と薄毛対策の両面で重要といえるでしょう。
DHTとAGA（男性型脱毛症）の関係｜なぜ薄毛になるのか
AGAは日本人男性の約30%に見られる進行性の脱毛症です。その発症メカニズムの中心にあるのがDHTであり、DHTを理解することはAGA治療の第一歩となります。ここでは、DHTがどのようにして薄毛を引き起こすのかを詳しく解説していきます。
AGAが起こるメカニズム
AGAが発症するメカニズムは、いくつかのステップに分かれています。まず、頭皮の毛包にある5αリダクターゼⅡ型がテストステロンをDHTに変換します。次に、生成されたDHTが毛包のアンドロゲン受容体と結合します。
この結合が起こると、毛母細胞の増殖を抑制するシグナルが発生し、毛髪の成長期が短縮されます。通常2〜6年ある成長期が数ヶ月〜1年程度に短くなってしまうのです。その結果、髪の毛は十分に成長できないまま抜け落ち、徐々に細く短い毛（軟毛）が増えていきます。
DHTが毛包に与える影響｜ヘアサイクルの乱れ
健康な髪の毛は「成長期」「退行期」「休止期」という3つの段階を繰り返しています。このサイクルをヘアサイクルといい、通常は成長期が最も長く、髪はこの期間にしっかりと太く長く育ちます。
しかし、DHTが毛包に作用すると、このヘアサイクルに異常が生じます。成長期が極端に短くなり、髪が十分に育つ前に抜け落ちてしまいます。さらに、毛包自体もDHTの影響で徐々に小さくなっていき（毛包のミニチュア化）、最終的には産毛のような細い毛しか生えなくなります。
重要なのは、毛包が完全に死滅するわけではないということ。適切な治療でDHTを抑制すれば、毛包の機能を回復させ、再び太い髪を育てることが可能なケースも多いです。ただし、効果には個人差があります。
M字型・O字型｜脱毛パターンの違い
AGAには特徴的な脱毛パターンがあります。額の生え際から後退していく「M字型」、頭頂部から薄くなる「O字型」、そしてその両方が同時に進行するパターンです。
なぜこのような特定のパターンになるかというと、DHTの影響を受けやすい毛包が頭頂部と前頭部に集中しているからです。後頭部や側頭部の毛包はDHTの影響を受けにくいため、AGAが進行しても髪が残りやすい傾向にあります。
脱毛パターンの進行度は「ハミルトン・ノーウッド分類」という基準で評価されることが多く、自分の状態を把握することで適切な治療方針を立てやすくなります。
DHTが多い人の特徴｜セルフチェックのポイント
DHTの分泌量は個人差があり、多い人には共通する特徴がいくつかあります。以下のチェックポイントに当てはまる項目が多い場合、DHTが多い可能性があり、AGAのリスクも高いかもしれません。あくまで目安ですが、参考にしてみてください。
体毛やヒゲが濃い
先述のとおり、DHTは体毛やヒゲの成長を促進する作用があります。ヒゲの伸びが早い、体毛が濃い方はDHT活性が高い可能性があります。特に10代後半〜20代前半からヒゲが濃くなり始めた方は、将来的にAGAを発症するリスクが高いかもしれません。
皮脂が多くニキビができやすい
DHTは皮脂腺を刺激して皮脂分泌を促進します。そのため、顔がテカりやすい、頭皮が脂っぽい方はDHTの影響の可能性があります。10代の頃からニキビに悩まされてきた方も該当するかもしれません。
体臭が気になる
皮脂量が多いと、それに伴って体臭が強くなることがあります。特に頭皮のにおいや脇のにおいが気になるという方は、皮脂分泌が活発でDHTの影響を受けている可能性があります。加齢臭が若い頃から気になるという場合も、DHT活性が高いサインの一つかもしれません。
M字や頭頂部が薄くなってきた
最も直接的なサインは、もちろん髪の毛の変化です。生え際がM字に後退してきた、頭頂部の地肌が見えるようになった、髪のボリュームが減った、抜け毛が増えたなどの症状がある場合、すでにDHTによるAGAが進行している可能性があります。
これらの特徴は個人差がありますし、必ずしもDHTだけが原因とは限りません。気になる症状がある場合は、早めに専門医に相談することをおすすめします。
DHTを減らす方法は3つ｜生活習慣から治療薬まで
DHTを減らす方法は、大きく分けて「生活習慣の改善」「運動と睡眠」「治療薬の使用」の3つがあります。どの方法が効果的かは個人差がありますが、基本的な生活習慣を整えつつ、必要に応じて治療薬を使用するのが現実的なアプローチです。
食生活の改善｜DHT抑制に役立つ栄養素
食事によるDHT抑制効果は限定的ですが、髪の健康維持に役立つ栄養素を意識的に摂取することは大切です。まず、亜鉛は5αリダクターゼの働きを抑制する可能性があるといわれており、牡蠣、牛肉、ナッツ類などに多く含まれています。
また、大豆製品に含まれるイソフラボンは、女性ホルモン様の作用でDHTの影響を和らげる可能性が示唆されています。緑茶に含まれるカテキンにも同様の作用があるという研究報告があります。
ただし、食事だけでAGAを改善することは難しく、あくまでサポート的な位置づけと考えてください。髪に良い栄養を摂りながら、必要に応じて治療薬を併用するのが効果的です。
運動習慣と睡眠の質を上げる
適度な運動はホルモンバランスを整える効果があります。特に有酸素運動はストレス軽減にも効果的で、間接的にDHTの影響を和らげる可能性があります。筋トレはテストステロンを増やすといわれますが、必ずしもDHTが増えるわけではありません。
睡眠も重要な要素です。睡眠中には成長ホルモンが分泌され、髪の毛を含む細胞の修復が行われます。睡眠不足が続くとホルモンバランスが乱れ、薄毛が進行しやすくなる可能性があります。1日7〜8時間の質の良い睡眠を心がけましょう。
ストレス管理も忘れてはいけません。慢性的なストレスはホルモンバランスを乱し、血行不良を引き起こすことがあります。自分なりのストレス解消法を見つけておくことも、薄毛対策の一環として大切です。
AGA治療薬でDHTを抑える
DHTを抑制したい場合は、医療機関で処方される治療薬が効果的とされています。日本皮膚科学会のガイドライン（2017年版）で推奨度Aとされているのが、フィナステリドとデュタステリドという2種類の5α還元酵素阻害薬です。
これらの薬は5αリダクターゼの働きを阻害し、テストステロンからDHTへの変換を防ぎます。その結果、頭皮のDHT濃度が低下し、毛包へのダメージが軽減されます。継続使用により、AGAの進行抑制だけでなく、発毛効果も期待できます。ただし、効果には個人差があり、すべての方に同様の効果が現れるわけではありません。
生活習慣の改善だけでは限界がある場合が多いため、本格的にAGA治療を考えるなら、まずは専門のクリニックで相談してみることをおすすめします。
DHT抑制薬を比較｜フィナステリドとデュタステリドの違い
AGA治療の主役となるのが、フィナステリドとデュタステリドという2つのDHT抑制薬です。どちらも5α還元酵素阻害薬ですが、作用の範囲や効果に違いがあります。ここでは、両薬剤の特徴を詳しく比較し、選び方のポイントを解説します。
| 項目 | フィナステリド | デュタステリド |
|---|---|---|
| 商品名 | プロペシア等 | ザガーロ等 |
| 阻害する酵素 | Ⅱ型のみ | Ⅰ型・Ⅱ型両方 |
| DHT抑制率 | 約70% | 約90% |
| 1日の用量 | 1mg | 0.5mg |
| 半減期 | 約6〜8時間 | 約3〜5週間 |
| 推奨度（ガイドライン） | A | A |
フィナステリドの効果と特徴
フィナステリドは、5αリダクターゼⅡ型を選択的に阻害する薬です。AGAに最も関与するⅡ型を狙い撃ちすることで、頭皮のDHT濃度を約70%低下させるとされています。日本では2005年に承認され、プロペシアという商品名で広く使用されています。
1日1回1mgの服用で効果を発揮し、早ければ3ヶ月程度で抜け毛の減少を実感できる場合があります。臨床試験では、1年間の継続服用で約90%の方にAGAの進行抑制効果が認められたと報告されています。ただし、効果には個人差があります。
半減期が約6〜8時間と比較的短いため、服用を中止すると数ヶ月で効果が失われます。継続することが重要な薬です。また、ジェネリック医薬品も多数存在し、費用を抑えて治療を続けやすいというメリットがあります。
デュタステリドの効果と特徴
デュタステリドは、5αリダクターゼのⅠ型とⅡ型の両方を阻害します。これにより、DHT濃度を約90%以上低下させることが可能とされています。日本では2015年にザガーロという商品名でAGA治療薬として承認されました。
フィナステリドよりも強力なDHT抑制効果があり、臨床試験ではフィナステリドを上回る発毛効果が報告されています。特に頭頂部の改善効果が高いという特徴があります。ただし、効果には個人差があります。
半減期が約3〜5週間と非常に長いため、体内に長く留まります。これは効果が安定するというメリットがある一方、副作用が出た場合に回復に時間がかかるというデメリットにもなります。
副作用と気をつけたいこと
両薬剤に共通する主な副作用として、性欲減退や勃起機能不全などの性機能関連の症状が報告されています。フィナステリドでは性欲減退が約1.1%、勃起機能不全が約0.7%程度の発生率です。デュタステリドでは性欲減退が約3.9%、勃起不全が約4.3%と、やや高い傾向にあります。
これらの副作用は服用を中止することで多くの場合改善します。ただし、まれに中止後も症状が続く「ポストフィナステリド症候群」の報告もあります。
また、両薬剤とも女性への投与は禁忌です。特に妊娠中の女性は触れることも避ける必要があります。胎児の男性器発達に影響を与える可能性があるためです。パートナーが妊娠中または妊娠の可能性がある場合は、薬の取り扱いに十分注意してください。
どちらを選ぶべき？選び方のポイント
初めてAGA治療を始める方には、まずフィナステリドから試すのが一般的です。副作用のリスクが比較的低く、ジェネリック医薬品で費用も抑えられるからです。
フィナステリドで効果が不十分な場合や、より強力な効果を求める場合は、デュタステリドへの切り替えを検討します。ただし、副作用のリスクや半減期の長さも考慮して、医師とよく相談した上で決めることが大切です。
どちらの薬も医師の処方が必要であり、定期的な経過観察を受けながら服用を続けることが重要です。
まとめ
DHT（ジヒドロテストステロン）は、テストステロンが5αリダクターゼという酵素によって変換されて作られる男性ホルモンです。DHTが頭皮の毛包に作用すると、ヘアサイクルが短縮され、髪の毛が十分に育たなくなり、AGAが進行していきます。
DHTを抑制する方法としては、食生活の改善や運動・睡眠といった生活習慣の見直しがありますが、効果を得るためにはフィナステリドやデュタステリドといった治療薬の使用が有効とされています。日本皮膚科学会のガイドライン（2017年版）でも、これらの薬は推奨度Aとして高く評価されています。
フィナステリドは5αリダクターゼⅡ型を阻害し、デュタステリドはⅠ型・Ⅱ型の両方を阻害します。どちらを選ぶかは、効果の強さ、副作用のリスク、費用などを総合的に考慮して、医師と相談しながら決めることが大切です。
AGAは進行性の脱毛症であり、早期に治療を始めるほど効果が期待できます。本記事で紹介した治療法の効果には個人差がありますが、気になる症状がある方は、まずは専門のクリニックで相談してみることをおすすめします。ご自身に合った治療法を見つけ、薄毛の悩みを解消する第一歩を踏み出しましょう。
2005年設立の株式会社ゼロメディカルで、医療・介護・福祉領域における経営支援や医療情報メディア運営、WEBマーケティングを統括。医療機関や関連施設の課題解決を支えるとともに、Kenkotto／Diamell／デンタルマイクロスコープClinic などの自社メディアを通じて、正確で分かりやすい情報を届ける体制づくりに取り組んでいる。
本記事では、医療機関の経営支援と医療メディア運営で培った知見にもとづき、情報の客観性・表記の妥当性・最新性を確認しています（※個別の診断・治療方針の判断は医師が行います）。
