リスクとデメリット、医療広告ガイドラインの限定解除で使うべきは?
「医療広告ガイドラインの限定解除は、リスクとデメリットのどちらを書けば良いの?」
ある日、このような質問を医療機関のクライアント様からいただく機会がありました。
自由診療のページを作る際、見出しには「メリット」と書くことが多いので、特に気にすることなく対応する形で「デメリット」という言葉を使っていました。
実際に多くの方々が、リスクとデメリットをバラバラに使っているような状況です。
しかし実は言葉の成り立ちを考えてみると、両者には様々な違いが存在します。
医療広告ガイドラインには書かれていない「デメリット」という言葉、そのまま使っても大丈夫なのかどうかをお答えします。
Contents
医療広告ガイドラインの限定解除の表記を見てみましょう
医療機関のホームページにおいて、自由診療の項目を掲載する際に必要な限定解除。
ディレクターやクライアントに指示するのは、標準的な料金掲載とともに「きちんとデメリットを書いておいてください」といった内容です。
しかし、医療広告ガイドラインの限定解除をよく見ると、以下のように書かれています。
限定解除の4要件
① 医療に関する適切な選択に資する情報であって患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウ ェブサイトその他これに準じる広告であること
② 表示される情報の内容について、患者等が容易に照会ができるよう、問い合わせ先を記載することその他の方法により明示すること
③ 自由診療に係る通常必要とされる治療等の内容、費用等に関する事項について情報を提供すること
④ 自由診療に係る治療等に係る主なリスク、副作用等に関する事項について情報を提供すること
ここには「デメリット」という言葉は一言も書かれていません。
リスクとデメリットの違いって何?
医療機関のガイドラインを指導する外部の委托団体からは、「自由診療の限定解除には「デメリット」を書いておいてください」と言われることがほとんどです。
しかし言葉に敏感なクライアント様からは、「リスクとデメリットは微妙にニュアンスが違うので、どちらかに統一したい」と言われることもあります。
どちらも物事のマイナス面を捉えた印象を受けます。そのため長い間、この問いに関してはピンと来る回答をなかなか返せませんでした。
昨年末に一冊の本と出会うまでは。
「リスク(risk)」とは、危険に遭遇する可能性を意味する
2018年に出版された田中靖浩 『会計の世界史 イタリア、イギリス、アメリカ――500年の物語』(日本経済新聞出版社)は、歴史において会計の概念が果たした役割をまとめた一冊です。
サラリーマンを中心にロングセラーとなっていますが、その中でずばり「リスク(risk)」の語源が掲載されています。
リスクの語源である「リズカーレ(risicare)」は大航海時代のイタリアの「船乗り」のことを意味したそうです。荒波が起きる海域、海賊なども跋扈する危険地帯。
そんな場所に一攫千金を求めて旅立っていく冒険者。
つまり、リスクは何かしらかの行動によって、危険な状況に遭遇する可能性を意味します。もちろん行動しないこともリスクに含まれます。
リスクヘッジという言葉に代表されるように、リスクに関しては対応できる体制を整えることが可能です。
「デメリット」とは、避けることのできない「欠点、短所、損失」
一方デメリットは「欠点、短所、損失」を意味します。
メリットの語源は、清水建二『イラストで記憶に残る 語源ビジュアル英単語』によると、
「取引できるくらい価値あるもの、つまりメリット( merit )は「長所」」
と書かれています。
また、語源英和辞典では、「ラテン語 mereo(評価に値する)+itum(こと)→smer-(割り当てる)」と説明されています。
出典:語源英和辞典
評価に値することから、 「メリット」は長所や利点という意味になり、その反対語の「デメリット」は欠点となりました。
重要なのが物事には必ず二面性があるように、デメリットは確実に発生します。
デメリットには、避けられないものという考えが強く出ているのです。
医療広告ガイドラインにおいては、リスクとデメリットをどう使い分ければ良いのか?
リスクは危険性という面が重視され、避けられる可能性があるもの。
デメリットは欠点や短所を意味し、避けられないもの。
より具体的に考えてみましょう。
たとえば入れ歯の自費治療、特に金属床を医療広告ガイドラインで限定解除をする際に両者の違いを解説してみます。
リスクの表記は、危険性+可能性という面で、「金属の種類によってはアレルギーが出る可能性があります。」という言葉となり、
デメリットは、避けられないものなので「保険診療であること」「製作に時間がかかる点」などが考えられます。
以上のような感じでリスクとデメリットは分けて表記することが可能です。
まとめ
リスクとデメリットの違いに関しては、避けられるのか、避けられないのか。危険性はあるのか、ないのかで判断していけば両者を混同するリスクは最小限で済みます。
ただ、さきほども述べたように現在の医療広告ガイドラインチェックでは、その辺りまでを詳しく見てはいないようです。
過度に気にする必要はありません。
どうしても気になる方は、「リスク・副作用」という見出しにしておけば良いかと思われます。
またその際に重要なのは、見出しではっきりと「リスク・副作用」と明記しておくことです。
よくある質問や概要ページにリスクや副作用の内容を含んでいると、残念ながら、限定解除しているとみなされず、たまに指導が来てしまうケースがあります。
一つずつ問題をクリアして、今後の医療広告ガイドラインに対応し続けるサイトにしていきましょう。
株式会社ゼロメディカル・主任Webライター
1988年生まれ。大学卒業後、教育分野と出版業界での経験を経て、2016年、株式会社ゼロメディカルにWebライターとして入社。これまでに、歯科医院、動物病院、クリニック、整骨院など、医療分野を中心に、200人以上の経営者を取材。1000以上の記事を執筆した経験を持つ。医療分野のほか、教育、法務、AI分野への造詣も深い。現在、人にしか書けない独自の記事を追求中。