無痛分娩を提供する施設はホームページの内容を見直しましょう
2018年5月8日、医療広告ガイドラインが改正されました。
医療サービスを求める患者が適切に選択・判断することができるように、ウェブサイトが担う役割の重要性はますます高まっており、監視の目も強化されつつあります。
医療広告ガイドラインは美容医療の消費者トラブルに端を発して改正に至ったという経緯があり、美容もしくは審美以外の領域ではあまりピンときていない先生方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、注意しなければならないのは、この医療広告ガイドラインは全ての医科・歯科が対象だということです。
中でも、無痛分娩を取り扱う施設では、ガイドラインに関連して注目すべき提言がなされています。
安全な無痛分娩を提供する体制の構築が求められています
改正された医療広告ガイドラインでは、分娩を実施している施設については、分娩を取り扱っている旨と、分娩の件数(集計期間を併記)については広告可能であるという内容が記載されています。
“広告可能”という表現は、広告してもいいし、しなくてもいいということなのでしょう。
しかし、ことさら無痛分娩を取り扱っている施設に関しては、無痛分娩を取り扱っている旨と無痛分娩の実績(集計期間を併記)、その他の情報についても積極的に載せたほうがよさそうです。
無痛分娩をめぐっては2017年に複数の重大事故が発生したことを受け、厚生労働省が実施数や常勤医師数の実態調査を始めていることが報じられています。
出産時の痛みを麻酔で和らげる無痛分娩には、出産の苦痛や疲労を和らげるメリットがある一方、出産の時間が長引いたり母子共に危険な状況に陥ったりするなどのリスクがあります。
しかし、一般に提供されている情報が不足していることから、不安が広がっているという指摘もありました。
そこで厚生労働省では、2018年4月下旬に『無痛分娩の安全な提供体制の構築について』という提言を公表し、その中でウェブサイトを通した情報公開についても言及しています。
提言の中では無痛分娩を取り扱う施設に対して、施設内の無痛分娩の診療体制等に関する情報をホームページ上で公開することが求められています。
これは、出産をひかえた妊婦やその家族が、分娩を行う医療機関を適切に選択できるような環境を整備することが目的です。
日本産科麻酔学会でも、ホームページ上に次のようなお知らせを掲載して提言の周知を呼びかけています。
厚生労働省から本学会に対して、表記の依頼とともに「無痛分娩の安全な提供体制の構築に関する提言(別添1)」及びそれに基づいた「無痛分娩取扱施設のための、「無痛分娩の安全な提供体制の構築に関する提言」に基づく自主点検表(別添2)」が平成30年4月20日付で送付されましたので、会員の皆様にお知らせいたします。
内容をご確認の上、しかるべくご対応いただきますよう、お願い申し上げます。
出典:日本産科麻酔学会
施設のウェブサイトに公開するべき情報
提言には、“無痛分娩取扱施設は、無痛分娩を希望する妊婦とその家族が、わかりやすく必要な情報に基づいて分娩施設を選択できるように、無痛分娩の診療体制に関する情報をウェブサイト等で公開すること”とあります。
具体的にはどのような情報を公開しなければならないのでしょうか。まず求められるのは、無痛分娩に関する説明です。
無痛分娩とはどのような出産方法なのか、得られるメリットと考えられるリスクは、など無痛分娩について妊婦が適切な知識を得られるような情報を発信する必要があるでしょう。
大切なのは妊婦が適切な選択ができるように、メリットだけではなくリスクについても説明しなければならないことです。
さらに、施設での無痛分娩の実施実績、担当者の研修歴、講習会受講歴を公開することで妊婦が適切に施設を選択できるようにすることが求められています。
ホームページで公開すべき情報
- 無痛分娩の説明
- 無痛分娩の方法
- 無痛分娩の診療実績
- 事態急変時の体制
- 危機対応シミュレーションの実施歴
- 無痛分娩麻酔管理者の研修、無痛分娩実施、講習会受講などの履歴
- 麻酔担当医の研修、無痛分娩実施、講習会受講などの履歴、救急蘇生コースの有効期限
- 日本産婦人科医会の偶発事例報告、妊産婦死亡報告事業への参画状況
- ウェブサイトの更新日時
※診療実績には、期間を併記すること
当然のことですが、これらの情報が虚偽や誇大になってしまってはいけません。
この提言が公開されたのは医療広告ガイドラインが改正される直前ということもあり、医療機関ホームページは今後広告規制の対象となるため、虚偽・誇大広告と認められた場合は医療法の規定に基づいて指導されると明記されています。
無痛分娩を取り扱う施設のホームページでは、医療広告ガイドラインの内容を遵守するとともに、上に示したような内容も積極的に公開していくことが求められています。
この機会に、なるべく早く該当のホームページでは内容を点検しておきましょう。
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