医療広告ガイドライン違反を調査・監視する委託業者が変更
医療広告ガイドラインに歯科医院やクリニックのホームページが対応しているかどうか。
その監視・調査を行っているのが、厚生労働省より委託を受けた外部業者だということはあまり知られていません。
2019年6月、厚生労働省は「一般財団法人日本消費者協会」から「デロイトトーマツコンサルティング」に委託業者を変更したと発表。
医療業界に様々な衝撃を与えるであろう今回の決定内容を見ていきましょう。
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いままで調査・監視を行っていたのは「一般財団法人日本消費者協会」
医院やクリニックが医療広告ガイドラインに違反しているのを見つけた際、厚生労働省は医療機関ネットパトロールへ通報するよう呼び掛けています。
ただ、通報件数は膨大。業種知識や法務的知識も必要となることから、監視・指導は厚生労働省から委託を受けている団体に任されていました。
それが「一般財団法人日本消費者協会」です。
しかし、SankeiBizが取り上げた「ネットの医療広告に法規制 個人の主観的体験談は×」(2018.5.24付)によれば、一般財団法人「日本消費者協会」でチェックに携わっているスタッフの数は10人前後。
日本全国の病院や歯科医院の数を考えると、まったく人手が足りなかったと想像できます。
それがよくわかるのは、ガイドラインに違反した際に送られてくる「貴医療機関のウェブサイトに関する注意喚起について」の内容です。
本状が送られてくると、違反内容を一か月以内に修正しなければいけません。
ただ、疑問点や質問点があった際の対応は、なんと書面のみというアナログさ。電話で問い合わせてみたところ、メールや電話での詳しい質問は受け付けていない様子でした。
監視・通知団体が変更「デロイト トーマツ コンサルティング合同会社」へ!
「貴医療機関のウェブサイトに関する注意喚起について」に記載されている勧告に従わない場合、各都道府県の保健所に医院やクリニックの情報が渡ります。
つまり外部委託業者は、ある案件がガイドライン違反かどうかを最初に決定する重要な役割を果たしているのです。
そんな調査・監視を行っていた「一般財団法人日本消費者協会」ですが、2019年6月に突然別の業者に変更となりました。
「第13回医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」で配付された「令和元年6月19日付け事務連絡「医業等に係るウェブサイトの監視体制強化事業について」」によると、新しい問い合わせ先は「デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 パブリックセクター」。
出典:令和元年6月19日付け事務連絡「医業等に係るウェブサイトの監視体制強化事業について」
「デロイト トーマツ」はコンサルティング会社のため、「医業等に係るウェブサイトの調査・監視体制強化事業担当」専門的な部署も設置しているのが特徴です。
新しい「貴医療機関のウェブサイトに関する注意喚起について」は他にどんなことが書かれていたか?
さらに詳しく見てみましょう。
前回と変更になった文面として、「不明点は問い合わせ先にメールで」「本状到着後1 か月を目途に改善状況の確認」などが重要です。
その違いが何を意味するのか?分かりやすく3つにまとめています。
1:「電話や郵送での問い合わせは受け付けていない」
前回の委託業者は書面による問い合わせ先がメイン。
医療広告ガイドラインの修正は、スピード感をもって取り組まねばならないので、非常に不便でした。
今回は直接メールで問い合わせが可能です。しかも返信が早いといったメリットがあります。
2:「違反指導の流れがよりわかりやすく整理」
以前は監視・通知・指導がどのようなフローで動くのかが詳しく整理されていませんでした。
今回の検討会では、「貴医療機関のウェブサイトに関する注意喚起について」の書面到着後、一ヶ月を目処に修正すべきと正式決定。
その後、改善が見られない場合は委託業者から都道府県に案件が移行し、三か月以内をめどに指導・是正。改善状況はデロイトトーマツ事務局に報告する流れになりました。
3:「案件名がないと、問い合わせに対応してくれない」
外部委託業者が変更になったことで、医療広告ガイドラインに関するグレーな部分を質問したくなる方も多いと思いますが、実際に違反した案件名を付記しないと問い合わせには対応しないようです。
また実際の案件に関しても、どのような表現が良いのかは教えてくれません。
グレーゾーンの解釈も一括で禁止する姿勢は「一般財団法人日本消費者協会」の時とあまり変わらない印象です。
指導が来た案件に関しては、やはり資料を読んだうえで修正の対応をしなければいけません。
その他「第13回医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」の資料からわかること
誤解されている方も多いのですが、実は検討会の中で医療広告ガイドラインに関する討論は一部分のみ。
医療情報全般を取り扱うので毎回話題は多岐に及びます。
今回は、ここまでページを読んでいただいた人のために、共有された資料の中からガイドラインに関わる部分をざっくりお伝えします。
1:「通報件数が3倍に増加=1800件」
最新の通報件数は驚くべき数字でした。平成30年度ネットパトロール事業報告によると、H29年度の審査対象サイト数が「678件」だったのに対して、H30年度はなんと「1801件」。しかもその54%が歯科分野ということで各方面に衝撃を与えています。
2:「ウェブサイト監視結果の適切なデータ管理を検討」
違反事例の分類をタグ付けし、各部門で円滑に情報を共有するデータ管理の方法を検討中ということです。
3「都道府県等の指導状況を把握するための調査を実施。」
違反事例に対して現状都道府県がどのような動きをしているか。対応状況がバラバラだったため一斉に調査を行うようです。
4:「検討会とは別に、指導現場への周知を徹底する会議を開催」
「医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」以外に、新しく医療広告協議会(仮称) が設置される見込みです。
ルール改正の論点を議論する「検討会」と、ルール・解釈の周知を自治体・関係団体に共有する「ブロック会議」に分かれると発表。
5:「一般の方向けに違反事例の解説書の作成予定」
医院やクリニックが、医療広告ガイドラインについて詳しく理解できるように、医療広告に違反した事例の解説書作成が検討されています。
まだまだ解釈が分かれている部分は多いので、是非早めに共有してほしいですね。
医療広告ガイドラインは次の段階へ
新しくなった外部委託業者は「医業等に係るウェブサイトの調査・監視体制強化事業担当」という部門名を設置していることからも、以前とは比べものにならないほど監視・通知・指導が厳格になるのは間違いありません。
実際、ここ数ヶ月間クライアント様から相談の機会をいただく回数が増え、高度な修正対応が必要とされる案件も増えてきました。
医療広告ガイドラインを丁寧に追ってきた当社としては、いよいよガイドラインは次の段階に移行してきたなという印象を強くしています。
今後のためにも、サイト制作に関しては、歯科医院・クリニックの業界知識と医療広告ガイドラインの内容を承知している制作会社へのお問い合わせをおすすめします。
「ガイドラインに対応したサイト制作を行いたい」「ガイドラインチェックをもとにしたサイトリニューアルが希望」そんな方は是非、下記フォームよりお問い合わせください。
弊社の特徴は充実したサポート体制。医療広告ガイドラインの状況に応じて柔軟な提案が可能です。
株式会社ゼロメディカル・主任Webライター
1988年生まれ。大学卒業後、教育分野と出版業界での経験を経て、2016年、株式会社ゼロメディカルにWebライターとして入社。これまでに、歯科医院、動物病院、クリニック、整骨院など、医療分野を中心に、200人以上の経営者を取材。1000以上の記事を執筆した経験を持つ。医療分野のほか、教育、法務、AI分野への造詣も深い。現在、人にしか書けない独自の記事を追求中。