ボトックス治療の研究結果
本日は、当院でも特に力を入れて行っている歯ぎしりのボトックス治療について、
新しい研究実験結果が発表されたので、ご紹介させていただきたいと思います。
少し専門的なお話になりますが、ご興味のある方はぜひ参考にして頂きたく思います。
実験内容
今回の実験は、米ベイラー医科大学神経学のJoseph Jankovic教授らによって行われたもので、小規模な「ランダム化比較試験(RCT)」によって示されたものになります。
具体的には、 ポリソムノグラフィーと呼ばれる睡眠検査によって睡眠中の歯ぎしりが確認された18~85歳の男女22人を対象とし、そのうち 13人には頬から咀嚼筋にボトックスを注入、残る9人には有効成分が含まれていないプラセボを同様に注射し、4~8週間後に再度、全員の歯ぎしりなどの症状を評価することでボトックス治療の効果を確認するというもの。
その結果、プラセボ注射を打ったグループには全般的な症状の改善がみられた患者いなかったのに対し、ボトックス注射を打ったグループでは13人中6人に「大幅」または「極めて大幅」な改善が認められたとのことから、歯ぎしり軽減にボトックス治療が有望であるということが示されました。
「ランダム化比較試験(RCT)」とは・・・
ランダム化比較試験(RCT)とは、医療情報や治療結果を評価するための研究実験の方法として、最も信頼性が高いとされる研究手法のことです。
非常に多くの手間と時間・費用が掛かる実験ですが、実験者個人の意見や思い込み、情報の偏りや偶然といった要素が入りにくく、客観性・信頼性の高い結果を得ることができます。
ボトックスの治療に関しては、今までもその有用性は謳われてきましたが診療室での研究や観察研究による症例報告によるものがほとんどでした。
しかし、 今回の研究でボトックス治療の有望性が示されたことから、 実験を行ったJankovic教授は、今後、歯ぎしりの治療においてボトックス治療が選択肢の一つなりうるのではないかとの見解を示しているとのことです。
対象者の副作用について
今回の実験では、重篤な副作用は認められなかったとのことでしたが、ボトックス治療を受けた患者13人のうち2人から、 笑顔になった時の印象に変化があったとの報告があったとの報告もあります。
この変化は数週間後には消失したとのことでしたが、一時的に表情に違和感が生じることは治療を受けるうえでの注意点と言えるでしょう。
情報元
今回の研究データは、米国医学雑誌「Neurology」1月17日オンライン版にて発表されたものになります。
まとめ
ボトックスによる歯ぎしり・食いしばり治療に関してはまだまだ対応している医院も少なく、また患者さまへの認知度で行っても低いのが現状かと思います。
しかしながら最近ではインターネットの普及もあり、患者さまご自身が、ご自身にあう適切な治療を受けるために様々な情報を得ることができるようになりました。
日進月歩の医療の世界では、新しい薬や情報、材料等がどんどんと開発されており、従来では諦めていた症状も新技術にとって治療ができる場合も多々あります。
もちろん、開発され、発表されているすべての治療が有効な治療法とは限りませんのでその有用性をしっかりと見極めながら選択する必要はあります。
当院では、最新の治療については自分自身の体でその効果を確かめながら、自分が本当に良いと納得したものを患者さまにご提供するようにしております。
メリットだけではなく治療を受けるにあたってのデメリットや注意点などもしっかりお伝えしますので、治療について気になる点がございましたらお気軽にご質問ください。