D.C.とは何か? 真のカイロプラクティックとは何か?
アメリカに渡り、WHOが定めるカイロプラクティックのD.C.認定。
当時日本人最年少取得者 長澤院長に迫る。
まずはアメリカに渡りカイロを目指した経緯を教えて下さい。
僕が整体へ足を踏み入れたきっかけは、父親が整体をやっていまして。
当時父が整体について、何かいい技術がないかと色々と調べていました。
その結果アメリカに、とんでもない資格があるぞと言ってきました。
父が言うには、勉強の過程から取得に至るまでほぼ医者と同じことを学べる資格があると。
そしてそれはアメリカでしか資格は取れないという話でした。
もちろん僕は、親の跡を継ぎたいなというのは感覚としてあって、後々は整体の道に進むのだろうと思っていたので、その資格を取ろうと決めたんです。
整体の道を目指しだしたのはそこからですね。
留学が決まったときはまだ17,8歳の頃で、当時ネットもあって無いようなもので、これから留学してどんなことをするのかを知るには、情報が少な過ぎたんですよね。
当時は特にカイロだと言われても、うちの父親は整体をしているので、ああいうことをするんだろうなっていうのはあったのですが、正直僕もよくわかっていませんでした。
その中で最初の時は、もちろん卒業するという目標等はありましたけど、
実際カイロとは何をやるのかっていう部分は、やっぱりあまりイメージはないんですよね。
実際、7年後に僕は絶対にクリアするぞという気持ちはあったのですが、
当然英語なんて喋れないまま、全くの手ぶらの状態で行ってますから。
そんな中で医学用語勉強して、なおかつそれをマスターしていくということを18、9歳ではなかなか想像できない。
だから、親としても、語学留学として英語だけを勉強して帰ってくるだけでも良かったのでしょうが、僕自身はD.C(ドクターオブカイロプラクティック)認定資格を取ると決めていたので、その先のゴールが語学留学している他の子達とはちょっと違っていましたね。
みなさん何になりたいとか、こういう仕事に就きたいとか色々言い合っていたと思うのですが、僕が目指すカイロプラクティックはというと、誰に話しても毎回「何それ?」と聞かれるように、当時知名度もほぼなかったですからね。
だから、あれこれ説明しても、ほとんど理解はされないような状況でした。
当時日本人最年少で取得されたそうですが、その時の経緯や苦労をお聞かせ下さい。
例えば、資格を取るために一つの学校に通うだけでは科目ごとの受講の順番やペースがあるので、回ってくる順番を待っていたら、3年、4年かかってしまう状況でした。
D.C.の学校に入学する条件として、日本の医大でいう一般教養を入学までに指定される成績で修了することが条件で、その入学資格取得のために僕の場合は最終的に5つぐらいの大学に通って成績を寄せ集め、D.C.の学校に入学しました。
一般教養を修了しているので日本の医大でいうところの3年から4年で習う内容、つまり解剖学や西洋医学などの本格的な医学的知識は入学してからすぐにスタートしました。
授業内容は日本の医大と変わらず、全ての学科がありました。
日本の医大は、一般教養から医学までのすべてを一環して学ぶ場所ですが、カイロは入学した瞬間から解剖学等の医学関連知識を学び始めます。
そのほかにも生理学、病理学やレントゲン学、整形外科学、理学療法、細菌学、組織学、発生学、公衆衛生学、小児学や老人学などの医療系の知識の授業が始まっていきます。
日本でカイロの学校に通っても解剖学、特に実習は学べないですからね。
その中で医学に関する学力のテストが1学期2学期3学期で、中間、期末とありましたが期末になってくると、テストの数が14科目とか15科目あって、しかも一個一個が専門的な試験で、例えば解剖学などは学科と実習というように1科目2種類の試験がありました。
内容は一緒ですが、学科と実習では傾向が全く違いますからすごく苦労しました。
他にはやはり英語ですね、僕は、正直英会話が下手なんです。
僕が行きつけのチャイニーズレストランの店があって、そこでよくテイクアウトをしていたんです。
店で注文をするときに自分の名前を伝えるのですが、伝えても通じてないんですよ。
もう渡米して7年目ですよ、通じないのはショックでしたね。
ですから7年目にしてもう一度発音からやり直しました。
だからインターンの時に一般の患者さんの対応をしている時は僕の英語が通じなくて苦労しましたね。
でも、医学用語に関しては、正直言うとそんなに苦労した感じはありませんでした、すごく学びやすかったので。
そこで日本語には元々語学的に理数系、医学系の勉強に対してハンデがあるんだと思いました。
考え方や文書の構成の仕方なども含めて、明らかに英語の方が早く書いたり理解する事が出来ました。
全く同じ内容の医学の勉強を日本語でしろと言われたら、できなかったと思います。
日本語はそれぐらいハンデがあるんです。
英語で学んだ方がノートの取るスピードがはるかに速い、英語と日本語で圧倒的に違います。
なぜなら英語だと、短縮語というのを自分なりに勝手に作れるんです。
例えば、withがw/という具合に。
だから半分の時間で書き取れました。
その分時間があるから知識の入ってくる余裕が全然違いました。
もう一つは、教えてくれる人間、教師のレベルが非常に高く、アメリカの学校のシステムの評価の基準で、
各学期が終わったら生徒の僕らが先生を採点、評価する制度がありました。
だから、アメリカの先生というのは、難しい内容をどれだけ分かりやすく生徒に教えるかという事に全ての労力を注ぎます。
僕らのような海外の人間にでも分かるぐらいに、授業はすごく分かりやすかったです。
カイロプラクティックとはどういったものですか?
カイロプラクティックはですね、基本的には骨格ですね。
施術を行うメインは骨格ですが、本当の目的は神経の正常化なんです。
背骨にあるのが脊髄神経、細い神経は脊髄神経から枝分かれしている。
つまりカイロプラクティックで一番コントロールするのは脊椎です。
問題は神経が脊椎の間の関節から出てくることで、カイロプラクティックでは、骨のズレという表現をよく使いますが、どういうことかというと、骨がズレることによって神経を圧迫するんです。
実際、僕が学生の時の話だと、骨のズレが神経を圧迫すると習いましたが、最新理論では神経に存在する毛細血管が圧迫されるというのが一番最新の理論ですね。
神経を圧迫するとなると相当強い圧力が必要になりますが、神経よりさらに細い血管の圧迫であれば、ちょっとしたズレでも圧迫できるという話ですね。
例えば、ヘルニアぐらい大きいなズレ方であれば神経を圧迫することは分かるのですが、事実ヘルニアでもない人でも足がしびれたりするわけです。
僕が考えるのは神経に通っているさらに細い血管なら、ちょっとしたズレの圧迫でも神経に対する血液供給を減少させられると考えています。
血液が通ってはじめて神経として成り立つんですから、そこの血液が停滞してしまい、血液の供給が少ない状態であれば、神経という組織を維持できなくなる。
そうすると、そこから神経的な疾患が起きると言うのがカイロプラクティック基本の理論なんです。
それを理解したときに僕が何をするのかというと、骨のズレを探し、元に戻しつつ血管を含む神経経路の正常化をしていくことなんです。
僕らの対処というのは神経に対してなので、例えば、脳と各部分のコーディネーションとか、各部位をどうシンクロさせるかなんですよね。
上半身と下半身、右と左、前と後の各部分を正しくシンクロさせないと調和が成り立ちませんから。
シンクロ率を上げていった究極的な状態とは何かといったら左右対称だと思います。
だから、どれだけシンクロ率を上げるかというのが僕の仕事なんです。
だから、利き腕や利き足なども全部見据えたうえで、いかに左右対称にして、全身のつり合いをとるか。
骨も筋肉の張りも左右対称の改善!これが僕の考えるカイロプラクティックの究極の目標です。
それをやるには、筋肉を伸ばすだけでは難しく、
神経系をなんとかしてあげないと、もしくは、骨格としての物理的な動きをちゃんと元に戻してあげないといけない。
これがカイロプラクティックです。
来院されるお客さんの層というのはどういった方々が来院されるのですか?
基本的には女性が多いですね、職業で言うと医療関係の方が多く、例えば理学療法士や、看護師さん。
あとは介護関係のお仕事をされている方も沢山来院されますね。
他にはアメリカやカナダなど海外の方がよくこられますね、やはりドクターオブカイロプラクティック(D.C.)の資格を持っている、そして僕が英語を話すことが出来るということが大きいんですかね?
医療関係の方でも、長い方はかれこれ5年、6年も通っていただいている方もいらっしゃいまして、「説明がすごく分かりやすい。」とよく言っていただけます。
僕らD.C.はやはり特殊なフィールドなので、きちんと医療知識というものに準じた説明をしないと、医療関係者の方々は納得して頂けないです。
僕らD.C.は少なくともアメリカに行って西洋医学をベースにして勉強した限りは、僕らの技術というものを西洋医学で説明できないといけない。
医学知識、経験に基づいてきちんと説明するとやはり医療関係の方々にも理解、納得いただけます。医学の知識に基づいて施術していることへの安心感などはあると思います。
プロのスポーツ選手なども来られるそうですね。
そうですね。プロスポーツ選手で言うとサッカー選手の方がよく来られます。
もちろん選手の方だけでなくコーチの方も来られますね。
プロの方々に来院いただくとやはり自分の技術により自信が持てますね。
来院された方に心がけていることはかありますか?
気をつけていることはやはり説明ですね。当然、来院される方は痛くて来られるんです。でも重要なのは、「なぜ痛くなっているのか。」や「あなたの今身体こういう状態になっています。だから、こういう処置が必要です。」という説明も必要だと思っています。
当院に通われている方で、先日別の整体院に行ったらしいのですが、よく分からない機械を使って「ここが悪い」とか、「機械にこう出ていますから」という感じで説明を受け、簡単な説明のみでその後、ここがすごくズレてるから3か月は通院が必要といわれ、3か月も通院できませんと答えたら、でしたら3回は通院して下さいといわれたそうです。
普通のお医者さんで、骨や大きな傷ではないのに3か月の通院が必要です!とはそうそう言わないと思います。
それに柔道整復師、整体院などは毎日通院をしてくれと言ってくる場合があります。
ですが例えば歯医者さんやお医者さんがが毎日来いと言うでしょうか?
整形外科の先生が毎日来いと言うでしょうか?
僕はアメリカで言われているように、一般的なお医者さんの対応をしてるいだけなんです、僕らがそういう教育を受けたからです。
お医者さんはだいたい「様子見て1週間後かな」と様子を見る期間を作ると思います。
僕も様子見て一週間後、「だいぶ良くなってきましたね。
じゃあ次に3週間後か1か月後くらいに来て下さい」という判断なんです。
私が頻繁に施術を行うときはよっぽど悪いときですね、
しびれとか歩けないとか、そういう方であればやはり数日後っていうことはもちろんあります。ですが1年を通してそういうことってすごく稀でなんです。
それは身体を正常な状態に戻す為の必要な知識などに準じていくと、毎日という回答にはまずならないんですよ。
他の整骨院やマッサージ院等では医学知識などが浅い、または準じない為、説明も少ないわけですよね。
確かに私も人間なので、100人いれば100人すべてが納得のいくような説明はできないかもしれないですが、一番心がけるのは、説明を懇切丁寧にして理解してもらうということ。特にこういう技術なので、適当にやっているとか、勘で施術しているというふうに見られても困るんですよ。
ですので情報や内容をきちんと言葉に出して分かりやすく説明していくそれが一番大事なことだと思っています。
カイロの経営以外にも学校で講師としての活動もされているそうですね。
講師は、今受け持っている学校では4年目になります。
アメリカの学校を卒業した翌年から講師業についていて、以前名古屋にいた時も講師をやっていたので、もうかれこれ12,3年ほどなりますね。
講師業は端的に、人に難しいものを難しく教えるというのは誰にでもできます。
難しいものをいかに柔らかく簡単に教えるかというところに、その講師の質を問われるわけなので、在米中のカイロプラクティックの学校で習った講師の方々のように、どのように分かりやすく教えるかという事に僕自身かなり時間を費やしましたね。
その講師業で培った話し方のお陰で、カイロに来られたお客様の対応や説明のときに役立っていますね。
講師の場合はどういったことを教えられてるんですか?
講師としてはいろいろ教えてきました。
名古屋の学校で講師をしていた頃はカイロに関する科目を全教科教えていました。解剖学、生理学、病理学、神経学、発生学、組織学、整形外科学、運動力学、運動生理学等で、カイロプラクティックに関連する理論関係、実技関係、全部です。
福岡に来てからは、解剖学や生理学など個別に教える事もありますし、総合的なカイロの授業などを教える事もありました。
元々は全教科教えていた経験がありますので、どのようなアプローチでも教えることが出来る事が強みですね。
僕らが通っていた学校では、解剖学の先生は解剖のプロのですが、解剖学しか教えてくれないんです。
例えば、ここの骨はこういう骨折が多いだとか、こういうズレ方をするとか、こういう症状にすごく重要だからという予備知識は一切ありませんでした。
ただ解剖を教えてくれるだけですよね。
でも僕が教える場合は自分が学んだ知識を全部網羅するので、どこのポイントがどの時点で重要になるかとか、カイロプラクティック的にどこの内容はこの内容差し置いてでも覚えなきゃいけないというのが既に分かっています。それで、カイロに対する教え方、内容というのは従来の教え方とは全く違いますよね。
解剖学で、この骨を覚えてと言ってもなかなか難しい。
でも、なぜこの骨が重要かというと理由や豆知識が入るとものすごく覚えやすくなりますよね。
私がカイロの学校に通っていたときも、前半はただひたすら覚えるだけ、でも後半はD.C.の教授が教えてくれるから面白いですよ、いろんな知識が入ってくるからですね。
解剖学がすごく重要なのは認めますが、やっぱり豆知識などを教えてくれる先生から習う解剖学っていうものは面白かっただろうなと思いますね。
一応僕も講師として心がけているのは、やはり面白く!
面白くないと学べないのでそこが僕の中でもかなり重要視してるところではありますね。
どういった学校で教えられているのですか?
博多にある学校で、かなり短期集中型の学校です。
だから、基本だけという話になっていますが、僕の中の前提としては解剖学とかその他の項目も一通りやってきた人が教えやすい学校ですね。基本的には実技とカイロプラクティックの理論を教えているのですが、僕らがいたD.C.の学校でいうと2年生の後半の内容です。
3年生からやる内容が全てのメインで、一年生では、大まかにしかやらないんです。
生徒に言って、大まかな解剖学、生理学等は事前に指示して覚えてきてくださいという前提で話を進めます。
だから、期間は短いですけど、かなり濃い内容になりますね。
今後はアロマとストレッチを融合させた技術を作ることも今考えています。
カイロプラクティックは、リラクゼーションではなく健康だと思います。
僕は最終的にそこに美をつなげる事ができればと思っています。
美というとエステという感じですけどそれではエステで終わりなんです。
大半のエステに健康的な、医学的な知識、技術があるわけじゃないですからね。
だから美と健康の融合を考えてます。
機能しないダイエットとか、身体に対する間違った考え方とかあるじゃないですか?
例えば骨盤矯正したら痩せるとか、めちゃくちゃな知識が氾濫してますよね。
それはなぜかというと、美や痩せるという言葉に対してお客様がだまされるわけです。
ですが僕はどちらかというと、僕らの知識を美という方向に入れることによって正しい身体の認識というか、正しく知る。そういったものをお客様に正確にお伝えする事が出来ると思います。
僕は正確な知識を正確に伝える場を、継続的に作っていかなきゃいけないと思っています。だから講師業でもそうですが、僕自身もいずれ学校というものを自分で作りたいと思っています。
例えばカイロプラクティックをマッサージや整体、気の力でとかそんなふうに思っている人もいるかもしれないですしね。
もっといえば、骨が折れたりするかも知れないから怖いと思う方や、怖いと思われるような技術を平気で使う人もいるわけです。
だからそういった正確な知識の伝達には、まずは業界の最適化をやっていくべきだと思っています。
それにはやはりお医者さんとしっかり組まないとダメだと思います。
僕らの独りよがりだけでどうにかなる問題じゃないですから、やはりお医者さんとの意識、認識、考え方をすり合わせていかないとそれは無理だと思っています。
そういった活動というか、医療との根本的な連動、連携ができればいいなと思うし、今後そういったとこを目指したいといと考えています。